先日、日本経済新聞で今まで「よくわかっていない」や「影響があるかないか判断できない」とされるほどの『低線量被ばくでも健康影響?』という見出しがでていた。
これから診療放射線技師を目指す方でも現在、診療放射線技師でもこの記事を読んだ方はいったいどれほどいるだろうか?
診療放射線技師よりも、日々、日本経済の情報収集している方のほうが、このような記事に触れる機会画多いのではないだろうか?!
私はこの記事を読んだときに、これから、患者さんから被ばくの心配をされたときに「もうこの検査による放射線被ばくは影響がありません」という一言で納得する人が少なくなるのではないかと思われたのです。
いったいどういうことか?
今回は、新聞記事についての感想文になるかもしれないが、たまには挑戦したいと思います。
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記事の内容は?
まず、この記事の内容がどういったものだったのかです。
詳しくは記事を検索して読んでほしいのですが・・・
アメリカ、イギリス、フランスで原子力施設の作業員31万人のデータを過去にも遡りを調査した結果をしめしたものでした。
どういった結果だったのかざっと過剰書きにすると・・・
・平均の年間線量1.1mSvであり、31万人中531人が白血病で死亡。うち30人で被ばくとの関連が推定される。1mSvあたり0.3%の死亡リスク増加が見られる。
・大腸の平均積算線量が約21mSvであり、白血病以外のがんでなくなった約1万9000人のうち209人で被ばくとの関連が推定される。1mSv当たり0.048%の死亡リスク増加が見られる。
・2013年、オーストラリアで発表された調査結果。CT検査を受けてから1年以上経過後にがんと診断された約68万人を対象にして、脳腫瘍など様々ながんの発生頻度がCT検査を受けていない人に比べて24%大きい。
の3つです。
もちろんこれらの結果には、懸念材料もあります。
その内容として挙げられたのが、
・元々、このような分析を行うために集められたデータではないことやCT検査を受けた人はもともと何らかの受診理由があって、がんの兆候がすでにあったのかもしれないということです。
ただ、この記事の結論として、20世紀半ば以降下火だった研究が、福島原発事故などをきっかけにまた再燃しており、今まで不確かだったものを少しでも「わかる」が増えてくるのではというのだ。
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現在は・・・
現在、病院の放射線検査を受けるときに、「検査による影響はあるの?」、「他の放射線検査もいくつも受けてますが大丈夫なの?」といったことが気になる方も多く、そのような質問は受ける機会は少なくはありません。
しかし、いずれにしろ「放射線の影響はあるのか?」という質問を受けた時の答えはほぼ決まっているといっても過言ではないでしょう。
では、どのように答えるのか?
答えは大きく分けて2つのパターンに分けられるでしょう。
➀病気のことを調べるためには必要な検査です。
➁病院の放射線検査でなにか影響が出るということはありません。
といった内容であると考えられます。実際、そのように教育を受けてきている人が多いのです。
『誰に対しても答えが決まっているなんてテキトー過ぎる!!』
と、思う方もいるかもしれませんが、
この答えをするにはきちんとした理由や根拠があるのです。
そもそも、放射線被ばくによる影響は、確定的影響と確率的影響に分けられます。
確定的影響は影響が出現するには、一定以上の被ばく線量、つまりしきい値が存在する者であり、一番低い線量で胎児に対する100mSvと言われています。
一方、確率的影響とは、被ばく線量が多くなればなるほど、がんなどのリスクが高まるとされるものであるが、100mSv未満ではその影響は不確かであるというものです。
つまり、確定的影響も確率的影響のどちらも100mSv未満であれば、なにか起こるようなことがあっても放射線の影響だと断定することはできなかったといえるのです。
そして、病院で行う放射線検査を全て受けたとしても、100mSvを超えるような被ばくをすることはほぼないと言い切れるために、上記のような答え方が定着したのだと思われます。
これからは・・・
ただし、新聞でもいわれていたが、これからは、今まで分からなかったことがわかるようになるということがどんどん進むことでしょう。
それは、放射線被ばくに関しても同様であり、今まで、よくわからなかった100mSv未満の被ばくに関しても重大な問題が発見されることもあることになるのです。
そんな時に、放射線業務に関わる人が、その情報を知らなずに、これまで通りの答えをしてしまったら、相手の満足を得られないばかりか、怒りや反感を買い、信用性を失くすことなるかもしれません。
それほどに放射線被ばくへの関心は高く、ナイーブな問題であるということを常に意識し、どんな時代にも対応するためにも、学校で学んだ内容が全て正しい時代は、いつまで続くのかという、危機感は常に持つ必要がありそうです。
しかし、今までわからなかった領域の放射線の影響があるのか、ないのかはっきりとわかるようになっていけば、より一層、放射線検査への安全性や患者さんたちの安心感が高まることに繋がるため、私としてはぜひ、解明が進むことを期待したいと思っています。