肝アシアロシンチとは、体内に放射性医薬品を投与して行う核医学検査の一つです。肝臓に病気を持つ、子どもでも行う検査のためどんなことをしているのか気になる方も多いかもしれません。
今回は肝アシアロシンチについてまとめてみたいと思います。
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使う放射性医薬品とは?
核医学検査は、例外なく体内に放射線を出す薬を注射することになります。(これを放射性医薬品と呼ぶ)
この検査で注射する放射性医薬品は、
99mTc-GSA(galactosyl human serum albumin)
※GSAとは・・・
アシアロ糖タンパク受容体に特異的に認識結合される合成糖タンパクのこと。これを放射性同位元素の99mTに標識した(くっつけた)ものが99mTc-GSAである。
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放射線医薬品がどんな作用をするの?
肝細胞には糖分子が結合したタンパク質(糖蛋白)を処理する機能があり、肝細胞表面にはアシアロ糖タンパクと結合する受容体が存在しています。
この受容体の量や機能というのが、肝機能と相関しているため、この検査に使用する99mTc-GSAを投与し、肝細胞に取り込ませることで、肝障害(肝予備能)の程度を評価することができるのです。
※肝予備能とは・・・
肝臓はある程度の障害を受けても代償作用が働いて元に戻ることができる。この肝臓の性質を「肝予備能」という。さらに、肝機能検査と肝予備能検査では少し意味合いが異なります。
肝機能検査は肝細胞の障害を反映する検査や胆汁うっ滞などを反映する検査、肝予備能検査は肝臓の合成・解毒機能を反映する検査をさします。
検査の流れ
核医学検査では、待機時間や前処置があることが多いですが、この検査に関してはありません。
・前処置なし
・検査の流れ
➀患者さんに検査台に寝てもらう。(仰向けが望ましい)
➁検出器を心臓および肝臓が入るように合わせる。(胸部から上腹部あたり)
➂99mTc-GSAの注射。
➃投与直後から15~20分程度、動態(連続)撮像する。
➄前面像、後面像の撮影。
➅重要な箇所は、検出器を回し(SPECT収集)し、断層像を作成する。
解析・定量方法
検査で得たデータから、時間ごとにどれだけ放射性医薬品が集積したかを表しています。そこで、心臓および肝臓に関心領域を設定し、3分および15分の測定値から以下の指標を計算することにより肝予備能を定量的に評価できるのです。
H3;投与3分後に心臓から測定された放射能
H15:投与15分後に心臓から測定された放射能
L15:投与15分後に肝臓から測定された放射能
・血中クリアランスパラメータ
HH15=H15/H3
・肝摂取のパラメータ
LHL15=L15/(L15+H15)
SPECT像からは機能的肝容積も求めることができるため、肝動脈塞栓術(TAE)や肝切除手術における術式(範囲)の決定や、術前後の予備能の評価にも使われています。
正常値と異常値
・正常の場合
撮影像では、肝臓が明瞭に描出され、心臓には淡く血液プール像と呼ばれるものが見えます。投与して間もない頃には、心臓・血管・脾臓が描出されて見えので、時間経過ごとに描出される像が変化することには注意が必要です。
定量評価における正常値は
・HH15: 0.50以下
15分経っても心臓への集積が多ければ、肝機能障害あって心に停滞していることを意味することになります。なので、値は低いほうが正常となります。
・LHL15:0.96以上
15分経っても心臓へ停滞が多ければ分母が大きくなり、値は小さくなっていきます。なので値は大きいほうが正常。
・異常の場合
肝炎の場合では肝腫大、肝硬変では肝右葉の萎縮と左葉の腫大が特徴的です。
また、肝予備能が低下している場合には、肝臓への取り込みが低下し、心臓や血管、脾臓が強く描出されて見えるようです。激症肝炎ともなれば、ほとんど肝臓への取り込みが見られなくなります。