MRI原理⑪-スライス選択-

CTでは、X線が照射されたところが輪切り画像となって出力されています。

では、MRIでは、どうやって断面を作る部位を決めているのでしょうか?!

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断面の選択はどうやって?

人がMRI装置の中に入ると、そこは均一な磁場の中にいるということになります。

 

その中では、全身の陽子は、同じラーモア周波数でクルクルと周り、同一のRFパルスによって、励起と妨害をされることになるのです。

 

では、どうやってある特定断面だけ画像として抽出するのでしょうか?

 

それは、それぞれの部位によって異なる磁場強度を持つもう一つの磁場を、外部磁場を重ねることで部位によって、磁場が強いとこと弱いとこという環境を作り上げることでできるようになります。

 

どういうことか、もっと詳しく見ていきましょう。

この追加された磁場を傾斜磁場と呼びますが、傾斜磁場は元の磁場の強さに少し干渉する効果を持っています。

 

下の図では、磁場強度が足から頭に向かって増加しているのがわかると思います。

部位によって、異なる磁場強度の環境にすることで、検査する部位とそうでない部位を分けることができる。

このように磁場強度を変化させることによって、様々な部位に存在している陽子は異なる磁場環境にいることになり、異なる歳差運動の周波数を持つことになります。

 

すると、陽子は部位ごと個性を持った運動をしていることになり、陽子が速く運動している部位は頭、逆に遅い部位は足といったように認識できるようになり、特定の断面を選択することができるようになります。

 

さらに、この傾斜磁場はどんな方向にも重ね合わせることができるため、部位によって異なる周波数を持つRFパルスと傾斜磁場を組み合わせることで、患者さんを動かす必要なく、横断面だけでなく、縦や斜めなど、どんな断面でも撮影することができるようになります。

 

この特定の断面を検査できるようにする、この傾斜磁場のことをスライス選択用傾斜磁場とも呼ばれています。

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断面の厚さはどうやって?

正確にいうと、MR画像は断面像ではなく、断層像です。

 

ということは、一枚の画像は厚みを持っていることになります。

 

この画像の厚みをスライス厚といいますが、スライス厚は変化させることができます。

 

では、スライス厚を変化させるにはどうすればいいのでしょうか?

 

これには、二つの方法があります!!

 

●バンド幅と呼ばれる幅を持った周波数のRFパルスを送る
周波数の幅が広いほど、それにより励起される陽子が含まれるスライスが厚くなります。

ここで、下の図を見てください。

もし、64mHzまでの周波数のRFパルスを使うと、スライスの厚さがSlice 1のようになるとします。

しかし、もしも周波数が64mHzから64.5mHzまでしかないRFパルスを使うとすると、より薄いSlice 2の中に含まれる陽子だけが共鳴することになります。

このある幅をもった周波数のRFパルスを送ることでスライス厚の厚みを変化させることができるのです。

 

●傾斜磁場の勾配で変化させる(RFパルスは同じバンド幅の場合)
傾斜磁場の勾配が急であれば、すなわち、ある特定の間隔で磁場強度の違いが大きければ、歳差運動の周波数の違いもまた大きくなります。

slice1と3では、ともに64mHzと65mHzの間の周波数を含んだ、同じバンド幅のRFパルスが使われています。

しかしながら、より傾斜磁場の勾配が急なslice3のスライス厚は、slice1の場合よりも小さくなっています。

バンド幅が厚いほどスライス厚は厚くなる。
また、バンド幅が同じRFパルスの場合は、傾斜磁場の勾配が急のほうがスライスが薄くなる。

信号は断面の中のどの部分からきているのか?

最後に、信号が断面の中のどの部分から来ているのかという、画像を構成するために知らなければならない情報を、どうように見つけ出しているのでしょうか?

 

その仕掛けは、RFパルスがかけられている間だけを加えられているスライス選択用傾斜磁場の場合と似ています。

 

RFパルスが送られた後に、もう一つ傾斜磁場を加えます。

 

これは、下の図を使って説明します。

そこでは選択されたスライス内の陽子が、全て同じ周波数で歳差運動している状態で示されています。

 

そこで、ここの例では左から右に向かって次第に小さくなっているもう一つの傾斜磁場を加えます。

すると、そこのある陽子の歳差運動の周波数も、左から右に減少することになります。

 

その結果、それぞれの縦の列にある陽子は、これらの異なった周波数の信号を発することになります。

 

ここで、加えられた傾斜磁場は、周波数エンコーディング用の傾斜磁場と呼ばれます。

 

しかし、一つの縦の列にある陽子は、まだ全て同じ周波数のため、空間情報としては、充分ではありません。

 

そこで、今度は縦方向に傾斜磁場を短時間加えるのです。

 

このことにより、各陽子は、それぞれの磁場の強さに従って歳差運動の速度を速めることになります。

 

下の図では、上から下に向かうにつれて、少なくなっています。

 

この短時間の傾斜磁場が切られた後には、その列の全ての陽子は再び同じ磁場を経験し、歳差運動の周波数は同じになります。

 

ここで、各陽子には大きな違いが起こっています。

 

この傾斜磁場を加える前には、各陽子は位相は揃っていました。

 

が、傾斜磁場をかけた後には、各陽子とその信号は周波数は同じでも、位相はバラバラになっています。

縦の傾斜磁場をかける

ここで使った傾斜磁場は各陽子が違った位相で歳差運動するように働きかけることから、位相エンコーディング用傾斜磁場と呼びます。

 

これらの全ての傾斜磁場を加えた後には、最終的に異なった信号が混ざり合っている状態になっています。

 

これらの信号は、全て位置によって周波数が異なっていたり、同じ周波数でも違った位相であったりしており、ここから発する信号を分析することで、断面内のどの位置になにがあるのかなど結びつけることができ、画像が作られていくのです。