MRIでは、スキャンのシーケンスが沢山あり、高速撮影もすることができます。が、それ以外に撮影時間は何に影響されているのでしょうか?
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撮影時間の計算
普通のパルス系列で撮影する場合には、撮影時間は簡単に計算することができます。
なぜなら、求める式が存在しているからです。
では、その式とは・・・
撮影時間=TR×n×Nex
この式の意味を順に見ていきたいと思います。
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Nexとは?
励起する回数、つまり信号を受け取る回数のことです。
MRIでは、画像を作るために組織からの信号を受け取るわけですが、1回だけよりも2回、3回と複数回信号を受け取り、足し合わせて、平均化したほうがより良い画像を得ることができます。
実際に、そうすることで、信号ノイズ比(S/N)の良好な画像、つまり、ざらざらが少ない見やすい画像を得られるのです。
ただ、上の式を見てもわかるように、良い画像を得るために、信号を測定する回数を増やすごとに撮影時間は長くなるので注意が必要です。
このことを例えるならば、ざわざわと騒がしい中に座っているようなものです。
そして、隣りに座っている人が、何かあなたの耳元でささやいていますが、周りの雑音が大きすぎて、何を言っているのか理解することができません。
そんな場合、あなたは聞き取れるまで何度も繰り返して言ってもらうことになってしまうと思います。
そして、頭の中で、そのたびに聞き取れた言葉をつなぎ合わせて、相手が何を言っているのか理解しようするでしょう。
この時の相手の言葉はMRIでの信号と同じです。
何度も足し合わせることで、相手の言っている全体のことがわかるようになっていくのです。
一方、周りの雑音は、いつも同じことを繰り返して言っているわけではありません。むしろ、バラバラで、足し合わせても、意味が繋がらないことも多いでしょう。
となると、本当に聞きたいことは聞けて、雑音はそのままだということは、本当に得たいことを信号を得て、ノイズの量が変わらないということと同じになるのです。結果として、信号ノイズ比は大きくなります。
nとは?
上の式でいう、nとは、マトリックスの列の数を表しています。
テレビやデジカメなど画像は画素からできており、それが集まってイメージマトリックスを構成しています。
例えば、256×256のマトリックスは256の画素が256列あることを示しているのです。
そして、デジカメなども画素数が多いから、撮れる画像も綺麗なんだと宣伝されているようにMRIでも画素が多いほど、綺麗で詳細な画像を得ることが出来ます。ただ、MRIでは、画素数を増やすほど、撮影時間が延びてしまうのです。
TRが撮影時間に与える影響とは?
TRとは90°パルスから90°パルスまでの時間、RFパルスを繰り返して送る時間のことです。
つまり、長いTRが必要な撮像法ほど、次のTRを送るまで待つ時間が長くなり、結果として撮影時間の延長に繋がってしまうのです。
しかし、撮影時間を短くする方法もあります。
マルチスライス撮影法と呼ばれる方法です。
マルチスライス撮影法とは、一枚の断面を撮影しようとMR信号を得るためのシーケンスを繰り返すのを待っている間に、他のスライスも撮影してしまおうというものです。通常、MRIでは一枚の断面ごとにしか撮影できません。
ただ、マルチスライス撮影法であれば、TRが長いほど、多くのスライスを撮影することができ、撮影時間を短縮することができるのです。