現在、血管造影検査(アンギオグラフィー)では、デジタルサブトラクション血管造影(digital subtraction angiography:DSA)が一般的な手法になっています。
造影剤が存在する血管のみが描出され、骨およびその他の構造物が描出されていないという画像です。
どんな画像あというと、下のような画像です!!
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どうやってDSA画像を得ているの?
では、どうやってDSA画像を作っているのでしょうか?
少し、入門編として絵をつかって説明してみたいと思います。
テーブルの上にグラスが置いてあるのを想像してみてください。まずカメラで子の写真を撮ります。(A)次に、グラスの中に液体(ビール)を注ぎ、同じ位置から写真をもう一枚撮ります。(B)この間、グラスもテーブルもカメラの位置も変えていません。同じ状況で2枚の写真を撮影しているのです。ただ唯一、違う点はグラスの中にビールがあるのかないのかということです。
ここで、2枚目の写真から1枚目の写真を引き算します。すると、2枚目の画像から1枚目の画像を取り去ると、中身のビールだけが残ります。
ビールの入ったグラスー空のグラス=ビールとなったわけです。
1枚目と2枚目の変化だけを表した画像をサブトラクション(引き算)画像といいます。
X線画像のDSA画像も同様の手法を使っています。造影剤を注入する前と、注入した後の画像を撮影し、造影後の画像から造影前の画像を引き算します。結果、引き算した画像には造影剤だけが見えるのです。
そうすることで、骨や臓器と重なって、観察しにいような造影剤の流れも際立って観察できるようになるのです。
実際に、頭部血管の検査画像を見ると、以下のような感じになります。
ただ、この手法にはいくつか注意が必要なのを忘れてはいけません。
もし、2枚の画像を撮影する間に、何かが動いてしまった場合、引き算しても、動いている部分は引き算されず残ってしまうのです。
患者さんが検査中に動いてしまったり、呼吸の状態が違ったりと様々な要因できれいなDSA画像を得ることができなくなってしまうのです。
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DSAの利点とは?
では、昔の血管造影検査と比べてどんな利点があるのでしょうか?
・濃度分解能が良好
これが一番の利点ともいえます。濃度分解能が良いということは、X線のわずかな吸収差も検出できるということです。
ピンと来ないかもしれませんが、この効果は絶大です。
なぜなら、造影剤の量や濃度、注入速度を減らすことができるということ。
細いカテーテルや留置針を使用しても検査に影響がないことに繋がるからです。
どういうことか?
造影剤は急速かつ多量に注入することで、コントラストの良い画像を得ることができます。そのためには、なるべく太いカテーテルを挿入する必要性もあったのです。
ただ、DSAでは、わずかなX線吸収差も検出できるため、ゆっくりかつ少量でも画像上で検出することが可能です。
そのため、一度に注入できる量が少なくなる細いカテーテルでも、以前と同様の検査結果を得ることできるようになたのです。
細いカテーテルの使用は、血管損傷や検査後の出血のリスクを軽減する意味でも大きな意味を持っています。
・すぐに写真を見ることが出来る
コンピュータで画像処理を行うため、撮影した瞬間から画像を観察できます。いちいち、暗室でフィルムを現像する必要性がなくなったのです。
・時間短縮
結果、検査時間の短縮にもつながっています。
DSAの欠点とは?
もちろん良い点だけではなく、欠点もあります。
・動きに弱い
2枚の画像を撮影する間に、動いたところは引き算することができません。
呼吸、消化管の蠕動、心臓の動きなど、常に動いている臓器や部位では、良好なDSA画像は得ることができません。(あと、非協力的な患者さんの場合も・・・)
消化管の動きは、薬で押さえることは可能ですが、他の動きは抑制することが出来ません。
・低い空間分解能
以前の血管造影検査に比べて、細部まで観察できなくなっています。
ただ、現在はCTや超音波など様々な検査技術が向上しているため、DSAでは必ず細部まで観察する必要性がなくなっています。