病院の画像検査で使う造影剤は、病気の発見だけでなくどんな病気なのか確定するため、病気の状態の把握を容易にするために使われます。
X線CTやMRIでは、静脈に注射して使い、血管造影検査ではカテーテルという細い管を使って、目的の血管に直接注入します。
また、バリウム検査で知られるように飲んで使う造影剤や大腸検査のようにおしりから注入して使うものもあります。
これらに使われる造影剤を簡単にまとめてみました。
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硫酸バリウム
食道や胃、小腸、大腸の検査時に使われる造影剤です。
食道や胃、小腸では飲んでもらうことで体内に投与し、大腸では、肛門にチューブを入れてバリウムを注入します。
バリウムは消化管の壁に付着し、消化管全体の形態や機能を評価することが出来ます。
血管内に投与しないことと、基本的に体内に吸収されないため副作用はほぼありません。
ただ、誤嚥すると肺炎の原因になったり、消化管穿孔の場合には腹膜炎を起こす恐れがあります。
また、便となって排泄されますが、消化管の動きが低下している場合や狭窄がある場合にも腸閉塞の原因になるため、注意が必要です。
腸閉塞や消化管穿孔が疑われる場合には、使うことができない造影剤です。
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ヨード造影剤
X線CT、血管造影検査(アンギオグラフィー)、X線TV撮影検査で使われる造影剤です。
イオン性と非イオン性で用途が違いますが、
・イオン性⇒血管外(膀胱や肝菅、胆管、関節腔など)
・非イオン性⇒血管内、脊髄腔
に使われるの一般的です。
非イオン性のほうが安全性が高い薬剤ですが、高価な薬剤になります。
非イオン性を血管内に投与したとの副作用は全体で3.13%、そのうち重篤なものは0.04~0.004%とされています。
意外と起こるかもと思うかもしれませんが、イオン性を投与していた時代は、もっと高確率で副作用が起こっていたようです。
起こる副作用の種類としては嘔気、嘔吐、かゆみ、蕁麻疹、血圧低下などのすぐに回復できる軽度のものが多いですが、重篤になると心停止、呼吸困難になることもあります。
ヨード造影剤は体内に吸収され、尿となって排泄されます。体内に吸収されるため、消化管穿孔の疑われ、バリウムが使えない方でも消化管の検査を行うことが出来ますが、一方で、血管内に投与するときには、腎臓の機能が悪い方には使用不可です。
腎機能が悪い方に投与すると、造影剤腎症という障害を起こすことになります。
ヨードアレルギーや喘息、腎機能障害の場合には、使用することが出来ませんので注意が必要です。
MRI造影剤
MRI検査で使われる造影剤は、静脈に投与するものか経口摂取するものの2種類あります。
●静脈性投与
・ガドリニウム(Gd)造影剤
投与後、血流に乗って目的臓器に到達後、臓器内での血管や細胞外液における存在量の違いによって正常と病気の違いを画像上に表示してきた。
Gd造影剤は、緩和時間を短縮することにより、プロトンから放出される信号強度を高める効果がある。実際の画像では、T1強調画像にて使われる。
副作用の発生はヨード造影剤に比べて低いが、蕁麻疹、頭痛、悪心・嘔吐などの副作用は存在し、また重篤なものも報告されています。
・SPIO
正常な肝細胞にはクッパー細胞というのがあるが、癌化した細胞にはクッパー細胞がない。SPIOは正常な肝細胞のクッパー細胞に取り込まれる性質を持っており、正常な細胞と癌化した細胞の間に画像上でコントラストが生まれて診断が可能になる。
比較的副作用は少ないですが、悪心・嘔吐、頭痛などの他に、静脈注射中に腰痛を感じることがあります。この腰痛は注射を中止すれば速やかに消失します。
・EOB・プリモビスト
正常肝細胞が胆汁色素であるビリルビンを取り込むのと同じ機序により正常肝細胞に取り込まれやすい造影剤。
体内に注入されたプリモビストの約40%が肝細胞に取り込まれるが、機能が失われた肝細胞癌では、プリモビストが取り込まれません。結果として、画像上で正常肝組織と肝細胞癌を区別できるようになる。
●MRI経口消化管造影剤
総胆管などの検査を行う時に最も良く使われる造影剤。
胆管を撮影するときに、胃液や腸液から影響を抑えるために飲みます。
他の造影剤とは異なり造影剤を投与した消化管からの信号を抑えるために使っています。
副作用について
造影剤を使った時の副作用は、起こるまでの時間で2種類に分けられます。
それが、即時性副作用と遅発性副作用です。
・即時性副作用
造影剤の副作用は、そのほとんどが投与直後から起こります。これが、即時性副作用です。
痒みや蕁麻疹、嘔吐、くしゃみ、喉の違和感などの軽い症状がほとんどであり、まれに呼吸困難、ショック、心停止など重篤な症状を生じる場合があります。
特に、アレルギー体質の方や気管支喘息の既往がある場合には、副作用が出現しやすくなると報告されており、腎機能が低下している方、糖尿病薬を内服中の方にも副作用が起こる。
・遅発性副作用
ごくまれに検査をして1~2時間後から数日後に遅れて出現する場合があります。これが遅発性副作用です。起こる副作用は、痒みや蕁麻疹、嘔吐、くしゃみ、喉の違和感などの軽い症状がほとんどです。