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超音波検査:音響インピーダンスとは?

超音波検査について学ぶ際に出てくる言葉として、音響インピーダンスというのがあります。

 

今回は、音響インピーダンスについてまとめてみたいと思います。

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音響インピーダンスとは?

そもそも音響インピーダンスとはなにか。

 

それは、「物質固有にある抵抗値」みたいなもので、

『組織の密度ρ×組織の音速c』によって求められる値のことです。

 

では、抵抗値とはどういうことか。

 

普段、私たちの多くが聞く音楽などの音は、空気中を伝わって届いてきます。その速度にして約340m/sほどです。つまり、1秒間に340メートル進み、音とは空気中に伝わっていくことになるのです。

 

雷が鳴った際に、その伝わってくるまでの時間を測定すれば、雷までの距離を測定できるというがまさにこの原理を使ったものといえます。

 

ただ、ここで注意が必要です。

 

音が伝わる速度とは、空気や水、臓器などその媒質(環境)によって違ってくるのです。つまり、音の伝わる速さは環境によって速くも遅くもなるということです。

その例として有名なのが、水です。水(35度)の場合、空気中よりも伝わる速度は速く約4倍もの1520m/sにもなるのです。

 

この性質は、超音波でも同様であり、体内に超音波を当てた際も、体内の環境下によって、その伝わりやすさに応じて速度を変化させていることになるのです。

 

さらに、音が伝わる速さに影響を与えるものがあります。

 

それが、物質の密度です。音は密度が高い物質ほど遅く伝わるという性質をもつために、その影響を無視することはできません。

 

それ以外にも、音速に関わる因子はありますが、音響インピーダンスとは、音速に関わる二つの要素を乗じて求められる値であり、その物質が音を伝えにくい、抵抗が強いのか弱いのかというのを表していることになります。

 

つまり、音響インピーダンスの値は組織ごとに異なる値を持っていることになります。

 

そこで、具体的に生体における組織の音響インピーダンスの値の例を示したいと思います。

媒質 音速(m/s) 密度(kg/m³) 音響インピーダンス(10⁶kg・m⁻²・s⁻¹) 減衰定数
空気中 340 1.29 0.0004 10
水中 1,530 1,000 1.5 0.002
脂肪 1,460~1,470 920 1.35 0.6
1,535~1,580 1,060 1.64~1.68 0.9
1,545~1,630 1,070 1.65~1.74 1.5~ 2.5
2,730~4,100 1,380~ 1,810 3.75~7.38 3~10

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音響インピーダンスによる影響とは?

では、超音波検査では、この音響インピーダンスにどのような影響を与えるのでしょうか。

 

それは、超音波の反射と透過です。

 

超音波とは、音の性質を持っていると同時に光にも似たような性質を持っています。光が鏡には反射し、水へ入射すれば屈折しながら進むように超音波でもどうように反射と透過が起こるのです。

 

 

 

では、どのような場合に反射が起こり、はたまた透過が起こるのでしょうか。

 

それに大きく関係するのが2つの組織間の音響インピーダンスの差です。

 

超音波はプローブから発せられると、体内の色々な組織を横断するように進もうとします。しかし、ある組織Aから組織Bへと進む環境が変わる場合(音響インピーダンスの値が変わる場合)に、反射または屈折しながらの透過が起こることになります。

 

そして、組織Aと組織Bの音響インピーダンスの差が大きいほどに超音波は反射を起こすことになるのです。

 

 

逆に音響インピーダンスの差が小さい場合には、超音波は更に先に進む(透過)ことができるようになるのです。

 

まとめると、

 

 

・音響インピーダンスの差が大きい➡反射

・音響インピーダンスの差が小さい➡透過

 

覚えるのが苦手な方は、人の行動に置き換えてもいいかもしれません。

 

どこかの道を歩いている時のことを考えてみてください。平坦で舗装されている道路であり、かつ明かりもあるような環境であれば、誰でも迷わずに進むことが出来ます。では、その道路は途中から様子を変えて、歩いている道は舗装されておらずデコボコとして歩きにくく、さらには明かりも少なくなっていきます。それでも先ほどよりも進みにくいとはいえ、ゆっくりですが進むことができるはずです。

 

では、道には明かりが消え、歩いていたはずが突然、深い湖のような先には水が広がるだけの場所に落ちてしまったらどうでしょう。おそらく、突然の環境の変化に戸惑い、引き返すのではないでしょうか。

 

 

といったように、環境の変化が少なく、許容範囲であれば進む速度を変えて先に行くことができますが、環境の変化が大きくなれば、引き返し、元の場所に戻ろうとするはずです。その環境の変化が大きければ大きいほどその行動は顕著になるはずです。

 

超音波も同様です。筋肉を進み、環境があまり変わらない(音響インピーダンスの差が小さい)臓器や血液を進もうとすれば、その速度を進むことができます。(透過)

 

逆に、筋肉から骨や空気といった進む先の環境が大きく変わった場合(音響インピーダンスの差が大きい場合)には引き返してしまうことになるのです(反射)。そして、この超音波の反射は環境(音響インピーダンスの差が大きいほど)の変化大きければ大きいほど顕著となって現れることになります。

超音波画像への影響とは?

最後に音響インピーダンスの差が超音波画像にどのような影響を与えるのかまとめたいと思います。

 

と、その前に超音波画像がどのようにできているのかを簡単に復習したいと思います。

 

本当にあっさりになってしまいますが、

 

超音波画像は、プローブから超音波を体内に発し、そして体内で反射し返ってきた超音波から画像が作られています。これは、反射して帰ってこない超音波からは画像ができないことになるのです。この反射がなく情報がない領域は、画像上では暗くなって表現されることになります。逆に、反射があるところではそれだけ明るく表現されることになるのです。

 

少しまとめると、

反射が強いほど➡輝度は高い(白っぽく・エコーレベルが高い)

反射が弱いほど➡輝度が低い(黒っぽく・エコーレベルが低い)

となるのです。

 

では、これを音響インピーダンスの差によるものと合わせて閑雅てみるとどうでしょうか。

 

音響インピーダンスの差が大きいほど、超音波は反射が強くなります。つまり、画像上では輝度が高くなります。

 

逆に音響インピーダンスの差が小さいほど、反射は弱くなります。よって、画像上では輝度は低くなることになるのです。