MRI:グラディエントエコーとは?

MRIの難解項目の一つであるグラディエントエコーですが、理解を諦める方、言葉だけ知っていれば良いと思っている方が多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、グラディエントエコーとは何なのかまとめてみたいと思います。

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グラディエントエコーシーケンスとは?

MRIの基本的なシーケンスである、スピンエコーシーケンスとは、180°RFパルスによって、バラバラになったプロトンの歳差運動の位相を再収束させ、そこから発生する信号を画像化しています。

 

スピンエコーシーケンスにおいて、180°RFパルスは再収束に欠かせない要素であり、信号を得るために必要な因子であるのです。

 

それに対して、グラディエントエコーシーケンスとは、180°RFパルスを使わないのが特徴です。スピンエコーでは、欠かせない180°RFパルスを使用しないというのが理解をしにくくする部分かもしれませんが、まだ諦めてはいけません。

 

なぜなら、グラディエントエコーシーケンスでもプロトンの歳差運動を再収束させるということは変わりないからです。

 

では、グラディエントエコーシーケンスでは、どうやって再収束させているのか。

 

それが、グラディエントエコーと呼ばれる、傾斜磁場です。傾斜磁場を使い、エコー信号を得て画像化させるをグラディエントエコーシーケンスと呼んでいることになります。(グラディエントエコー(傾斜磁場)を使って、信号を得て画像化させる順序を経るからグラディエントエコーシーケンスなので命名としては単純です。)

 

理解を深めるために、もう少しだけまとめてみたいと思います。

 

傾斜磁場とは、傾斜磁場コイルに電流を流すことで発生させる勾配を持った磁場のことであり、その磁場強度の分だけプロトンの歳差運動周期に変化を与えています。その結果、生じる磁場が強くなるところではプロトンの歳差運動は速くなり、磁場が弱くなるところでは歳差運動は遅くなるという変化を起こすのです。

 

グラディエントエコーシーケンスでは傾斜磁場のスイッチを入れ、その後にスイッチを切ります。それから反対向きの傾斜磁場にスイッチを入れるということをします。そうすることで、傾斜磁場の勾配方向を変化させているのです。

 

このことによって、時間によって位相がずれていったプロトンが再収束させることができます。そして、プロトンが同位相にある時に、受信信号は最も強くなり、この最も強い信号がグラディエントエコーと呼ばれます。

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グラディエントエコーの利点と欠点とは?

利点と欠点をまとめる前に、少しだけ復習を兼ねて横磁化ができ、消失するまでを簡単にまとめたいと思います。

 

MRI装置内では、プロトンは上方向を向いているものが多く、全体の大きな磁化としては縦磁化と呼ばれる状態です。この状態から横磁化を発生させるのが、90°RFパルスです。90°RFパルスは上方向に向いていたプロトンを横向きに倒す効果があり、結果的に全体の大きな磁化も横向きになることになります。

 

ただ、横磁化は長続きはしません。時間とともに横磁化は減少し、縦磁化は回復をしていくことになります。

 

その主な理由は、2つです。

 

1つ目の理由は、T₂緩和時間で示される横緩和です。組織によって、異なる緩和時間をもって短いT₂を持つほどに、横磁化は速く消失していくことになります。

 

横磁化が消失するもうひとつの理由は、磁場の不均一性があげられます。スピンエコーシーケンスでは、磁場の不均一性は180°RFパルスによって相殺され影響は軽微になります。

 

しかし、グラディエントエコーシーケンスでは180°RFがないので、磁場の不均一性は相殺されることがありません。そのうえで、横磁化が減衰していくことになりますが、この場合180°RFパルスを使用しているときと異なった減衰をします。

 

それは、磁場の不均一性による影響をうけた減衰であるT₂*(T₂スター)で示される減衰です。そのため、グラディエントエコーシーケンスでは、スピンエコーシーケンス時のT₂緩和時に比べ、より速く減衰が起こることを覚える必要があります。

 

実際のイメージ図としては、以下のようなものになります。

このままでは、グラディエントエコーシーケンスが磁場の不均一に影響を受けやすいだけのシーケンスと理解されそうなので、少し軌道修正をしたいと思います。

 

ここからは、グラディエントエコーシーケンスの利点についてまとめてみましょう。

 

スピンエコーでは、180°RFパルスをを作り出す必要があります。ただ、180°RFパルスとは、言葉で説明するのは簡単ですが、実際に作り出すには、MR装置内にあるRFアンプが生成するのにどうしても一定以上の時間がかかってしまいます。

 

つまり、MR信号を出す時間には、制限があり、時間を短くするといっても限界があるのです。それは、エコー時間が180°RFパルスを作成して、それを適用するまでの時間を考慮すると更に長くなるのは明らかであり、その分、検査時間も延長されることになります。

 

一方で、グラディエントエコーシーケンスで使用する傾斜磁場の作成は、コイルに電気を流すだけであり、その工程の複雑さも時間もかかりません。そのため、傾斜磁場は180°RFパルスよりも速く作ることができることになります。

 

結果、1~2msの速さで、グラディエントエコーシーケンスによって、MR信号を得ることができるようになります。(エコー時間が短いため、撮影時間も短縮される)

 

グラディエントエコーシーケンスでは、180°RFパルスを使用しないことで起こる、T₂*減衰のために良い信号を得るためには、速いエコー時間が不可欠なのだと覚えてもいいかもしれません。