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X線可動絞りのメリット・デメリットとは?

X線撮影には、不要な被ばくを避けるためX線を照射する範囲を限定する絞りが装置内に備わっています。X線絞りは適切に使用すれば、被ばく線量の減少と画像コントラストの改善など欠かせない要因であるのす。

 

ただ、X線絞りにもデメリットが存在し、その使用法によっては被ばく線量の増加にも繋がってしまうのです。

 

今回は、X線絞りについてまとめてみたいと思います。

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X線絞りとは?

そもそもX線絞りとは、どういったものか復習したいと思います。

 

X線絞りは、『X線可動絞り』というのが正式ですが、実際の現場では少しだけ略されて『しぼり』や『X線絞り』と言われることが多い、特に可動っていう部分まで言う人はほぼいません。(大半が絞りで通じます。)

 

X線絞りは、X線管球に備わっており、焦点に近いほうから、奥羽根、下羽根(中羽根)、上羽根(本羽根)のことをいいます。

 

といっても、言葉ではわかりにくいので、図で見るのが一番です。

 

 

各羽根ごとに役割があり、以下のようになります。

 

・奥羽根

焦点外X線の除去が目的。

上下・左右の本羽根と連動する。

 

・下羽根

焦点外X線の除去が目的。

上下・左右の本羽根と連動する。

 

・上羽根

鉛板を主体に作られている。X線を任意の照射野に制限する羽根。

上下・左右対称にそれぞれ動く。

 

装置によって、異なりますが管球を下から除きこむと上羽根が見え、これだけで照射野を作っているように見えますが、意外と管球の奥にも照射野を構築するための羽根が備わっているのです。

 

つまり、X線可動絞りは3種類の羽根の総称であり、照射野はこれらによって作られていることになります。

 

絞りによる照射野の設定はとても簡単です。

 

その方法とは、X線管球についている絞りつぼみを回せばよいのです。そして、照射野ランプを点けて光で照射する範囲を確認しながら、診断に必要な範囲だけに絞りを入れることができます。

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絞りの効果とは?

X線可動絞りは、撮影だけに限らず透視装置を使用するときも含め、重要な部分です。そのメリットとなるのは主に以下の2つといえるでしょう。

 

・被ばく線量の低下

絞りといえば、一番のメリットは被ばく線量が低減できることです。照射範囲を限定することで、不要な部位への照射を避けることができるため、結果、被ばくも減ることになります。

 

また、アンギオグラフィなど透視装置を使用した検査や治療では絞りを入れることで、患者さんだけでなく、手技を行う医師や看護師への被ばくを抑えることができます。

 

X線可動絞りを入れてあげることは、半分が優しさでできているバファリン以上の優しさに繋がっているのです。

 

・ハレーションの防止(画像コントラストの改善)

FPD(flat panel detector:フラットパネルディテクタ)では、その影響は少ないのですが、アナログフィルムやCRシステムでは、無視できない存在です。(もちろんFPDでも無視すべきではないと思いますが)

 

撮影や透視する部位が、空気と接しやすい部位(例:頚部、四肢など)は、被写体を通過しないまま直接X線が検出器に入射しやすい環境です。

 

被写体を通過しないX線は、被写体を通過してきたX線比べ強度と量が大きいため検出器には過剰にX線が入射していることになります。そして、過剰に入射したX線によってハレーションが起こり、観察部位のコントラストまでもが低下する現象が起こってしまうのです。

 

X線可動絞りを入れ、被写体を通過しない部位を遮蔽することでハレーションが起こるの防ぐことができ、画像コントラストも改善します。

最適な照射野が最適な画像コントラストを作り上げるのです。

 

・焦点外X線の除去

X線可動絞りを構築する羽根は、焦点外X線を除去する役目も果たしています。焦点外X線は画像にかぶり(ボケ)となって悪影響を与える因子です。

 

照射されるX線から焦点外X線を事前に除去することで、良い画像を作成することに寄与していることになります。

絞りのデメリットとは?

X線可動絞りはX線装置に欠かせないものでありますが、メリットだけでなく、デメリットも存在します。

 

その一例を紹介したいと思います。

 

・上下・左右対称にしか絞れない
個人的になぜ、このような仕様になっているのかわからないのですが、X線可動絞りにはその動きに制限があります。

 

その制限とは、画像中心を軸に、上下対称および左右対称にしかできないことです。そのため、例え左は照射野を開いたまま、右を絞りたいと思っても、そんなことはできないのです。片方を絞ろうと思えば、自ずと両方が絞れてしまい照射野が狭くなることになります。

 

上下・左右の2枚の羽根が一つの調節つまみによって連動して動くことは、楽な場面も多いですが、弊害となる場面も存在することは確かです。

 

一部の方々には、『見たい部位が常に画像中心にあれば問題ないだろ』と言われてしまいそうですが、皆一度はそれぞれが動けばいいのにと思ったことはあるのではないでしょうか。

 

その代わり、操作が煩雑になることになりそうですが・・・。

 

・AECとの位置関係によって被ばく線量が増加する

X線可動絞りの落とし穴ともいえる要因かもしれません。

 

X線可動絞りによる照射野を狭いほど被ばく線量は減少すると考えている方はまさにその落とし穴にはまっているといえるでしょう。なぜなら、その考えは間違いになるケースがあるからです。

 

それは、どんな場面なのか。

 

X線の撮影・透視は管電圧、管電流、照射時間を設定する必要があります。この3つ値が常に一定の撮影を行う場合は、照射野が狭くなるほど被ばく線量は低減されるといって間違いはありません。

 

が、しかし、現在の検査や治療では、透視中ではABC(auto brightness control:自動輝度調整)、撮影ではAEC(automatic exposure control:自動露出制御)を使用することが一般的となっており、この2つの機能を使用している場合は被ばく線量が増加する場合があるのです。

 

この2つは検出器に備わっているセンサーみたいなもので、画像濃度を一定に保つための機構です。AECでは照射時間、ABCでは管電圧と管電流を調節し、X線量を調節しています。

 

その設置位置は、装置によってことなるのですが照射野が絞り過ぎてしまう場合、ABCやAECの計算領域にX線可動絞りが入ることになってしまい、装置はX線不足と感知することになってしまうのです。

 

結果、装置の勘違いから照射線量の増加、被ばく線量の増加になってしまうのです。せっかくの優しさが、逆効果になってしまうので、悔しいものです。

 

・視野が狭くなるほど、周りの状況がわかりにくい

X線可動絞りをかけた領域はX線遮断されるため画像が黒く表示されます。そのため、X線照射野以外の様子がつかみにくい(つかめない)ことになります。

 

『絞りをかけた領域は診療上、必要ないから絞っているんだ』と言われてしまっては、それまでですが、透視検査や治療では現在のメイン部位だけ写っていれば良いと思われる一方で、メイン外の画像も一緒に残しておきたいと思う要望もあるようです。