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管電圧の単位とは?

X線を発生させるうえで必ず考える値の一つが管電圧です。ただこの管電圧の単位には、それまで見慣れないkVpというものが使われています。

 

この単位は何なのか?という、小さな内容ですがまとめてみたいと思います。

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そもそも管電圧とは?

管電圧とは何か?という、そもそものところから始めてみたいと思います。

 

X線を発生させるには、X線管というものが必要です。

 

X線管には、フィラメントのある陰極とターゲットと呼ばれる金属(一般的にはタングステンが多い)が設置されており、フィラメントから電子が発生し、ターゲットに衝突することでX線が発生します。

 

 

このX線を発生させるときに付加する電圧を管電圧と言います。

 

X線管にかける電圧だから管電圧です。

 

私個人の考え方でありますが、X線管でいう管電圧とは加速装置みたいものです。X線の発生には電子をターゲットと呼ばれる金属に衝突させる必要があります。

 

しかし、電子を発生させるフィラメントとターゲットはくっついておらず、その間には空間?、隙間?、まぁ、距離があるわけです。ということは、フィラメントにある電子を離れたところにあるターゲットにまで飛ばすための力が必要になります。

 

その力というのが管電圧です。管電圧をかけることでフィラメントにある電子はターゲットまで飛んでいける推進力を得ることができ、X線を発生させることができるのです。

 

例えるなら、野球でいうピッチャーとボールのようなものです。ピッチャーが投げる前のボールに着眼してみると、ボールはグローブやピッチャーの手で握られている存在です。

当然、ボールは生き物ではないので、自分で勝手にキャッチャーまで飛んでいくことなどありえません。キャッチャーまで届かせるには、ピッチャーに投げられるといったボール以外からの外部の力が必要になるのです。

 

同様にフィラメントにある電子も自分で勝手に飛んでいけるわけではなく、ターゲットまで飛んでいくだけの力と飛んでいく明確な行き先が必要になるのです。

 

そして、投げる人によってボールの速さが異なるように、管電圧もその値によって電子が飛んでいくスピードが異なります。管電圧が高いほど、それだけ勢いよくターゲットまで飛んでいきますし、逆に、低いほど電子はゆっくりと発射されることになります。

 

さらに、X線の発生には、一般家庭で得られるような電圧(100V)ではなく、その1000倍もの電圧が必要になります。

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管電圧の値は何に影響するの?

管電圧がX線の発生のためには欠かせなく、その前の電子が勢いにまで影響を与える。

 

と、いうことですが・・・では、管電圧とX線の発生にはどんな関係があるのでしょうか。

 

管電圧の大きさはX線の発生効率と強度に関係します。

 

X線の発生には電子とターゲットが衝突したときに、大きな衝撃が必要です。そして、管電圧が高くなれば、それだけ電子が勢いよくターゲットに衝突することになり、当然、その衝撃も強くなります。

 

つまり、管電圧高いほど、X線は発生しやすくなるのです。

 

また、X線の強度も同様です。X線の強度とは、X線のエネルギーのことであり、X線が物体を突き抜ける力(透過力)がどの程度大きいのかに関係しています。

 

そのX線エネルギーは管電圧の値と比例関係にあり、

 

管電圧が高い⇒X線エネルギーが高い
管電圧が低い⇒X線エネルギーが低い

 

ということが成り立ちます。

 

そして、X線エネルギーが高いほど、透過力が高くなるので、物質に吸収されにくくなるという特徴をもちます。逆を言えば、X線のエネルギーが低いほど、物資に吸収されやすく透過力も低くなっていくのです。

 

少しまとめると、管電圧が高くなるほどX線は発生しやすく、そのエネルギーは高い、吸収もされにくいとなります。

管電圧の単位とは?

管電圧のことを軽く復習したところで、管電圧の単位について説明したいと思います。管電圧の単位にはkVpといったのが、使用されるのが一般的です。

 

kVpはキロボルトピークと呼びます。

 

一つずつ解説すると、k(キロ)は距離の1kmなどのキロと同じで1000を表すものです。そして、Vは一般家庭に使われている電圧の大きさのボルトのことを表しています。

 

つまり、1kVとは1Vの1000倍を表し、1,000Vと同じ意味をもつことになります。

 

では、p(ピーク)とは何を表しているのでしょうか。このp(ピーク)とは、X線管にかけた電圧と発生させたX線の最大エネルギーを表したものです。

 

どういことか。

 

X線管で発生したX線は、連続エネルギースペクトルと呼ばれる、様々なエネルギーを含んだX線です。

 

例え、100kV相当のX線が欲しいと思い、管電圧100kVをかけたとしても、そのエネルギー単体だけを発生させることはできません。自然とそれよりも低いエネルギーのX線が一緒に発生することになります。

 

また、ピッチャーに例えてしまうのですが、同じピッチャーが毎回同じような力を使ってもボールのスピードが毎回同じになることはありません。同じように投げたつもりでも、スピードが速くなったり遅くなったりしてしまうものです。

 

同様に、X線管に一定の管電圧をかけたつもりでも、フィラメントから発射される電子にはスピードの速い電子や遅い電子が生じてしまいます。そして、X線の強度は電子とターゲットが衝突したときの衝撃の強さに比例するので、自然と弱いX線も発生してしまうのです。

 

なので、管電圧の単位にはp(ピーク)がつけられており、最大でこれだけのX線が発生していますよということを表しているのです。

 

ただ、最近の文献を見ると、しばしぼ省略されていることが多いのも事実です。X線は連続エネルギーだあり、様々なエネルギーのX線が含まれている。

 

ということは、放射線に携わる人たちにとって共通の認識であるため、省略しても問題ないだろうと考えられているようです。