CT値とはCT画像にだけ使用される特有の値のことで、脂肪量の測定や血管の石灰化の程度など、診断の指標に使われることもあります。
CT画像を理解するには、欠かせない存在です。
そこで、今回はCT値についてまとめてみたいと思いますす。
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そもそもCT値とは?
そもそもCT値とはなんなのか?
冒頭でも少しだけ触れましたが、もっと基本的なことから説明したいと思います。
CT値とは、CT画像だけに適応される値ですが、これは水を基準とした、相対値によって表されています。
これだけでは、理解するには少し足らないので、具体的な例を用いて説明したいと思います。
みなさん、小学、中学などの学期末に貰った成績表を思い出してみてください。私がもらっていた成績表は、最初は絶対評価でつけられており、頑張ってテストで良い点数を取れば、先生に頑張ったねと評価さえしてもらえれば、よい成績をつけてもらっていました。しかし、途中から絶対評価から相対評価に変わってしまいました。相対評価では、科目ごとに基準となる人が決められ、その人より成績が良ければ高い成績を着けてもらいましたが、その一方で、基準に満たなければ以前よりも低い成績になることもありました。
つまり、相対評価ではある基準を決められそれよりも高いか低いかによって評価が変わるというものです。
CT値も同様です。
CT画像では、水のX線吸収係数(X線の吸収しやすさ)を基準にCT値を0とし、水よりX線吸収係数の高い組織はCT値が大きく、X線吸収係数の低い組織はCT値が小さく画像下されるように設定されているのです。
CT値が水の相対値によって決まるため、CTを撮影したときに水のCT値が0であるか否かはとても重要です。
全ての組織が、水を基準として表現されるため、水のCT値が正しく0と表現される条件が整っていないと、骨や心臓、肝臓、病気などを正しいCT値で表現することができず、画像全体のコントラストがおかしくなってしまい誤診を招く恐れがでてきてしまうのです。
このため定期的な水ファントム撮影によるチェックがCT値のチェックがとても重要視されているのです。
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CT値を求める式は?
水を基準とした相対値で決まるといった抽象的な表現ではどの組織が高いCT値を示し、逆に低いCT値を示す組織がどんなものかわかりにくいので、CT値を求める式で具体的に説明したいと思います。
CT検査自体は、X線を使用した検査法であるため自ずとX線の吸収が大きいものほどCT値が高く、吸収が小さいものほどCT値が低くなる傾向があります。
このX線吸収の大小を表したものがX線吸収係数です。
X線吸収が大きい物質ほど吸収係数の値も大きくなり、CT値も大きくなることになります。
ただ、上でも説明しましたがCT値は水を基準とした相対値です。そのため、CT値を求める式には水のX線吸収係数を含む形となり、以下のように示されることになる。
μ組織:組織のX線吸収係数(線減弱係数)
μ水 :水のX線吸収係数
ちなみに、CT値とは、組織の密度が高くなるほどX線吸収が高くなることからその値が大きくなることも知られています。(上の式を質量減弱係数に置き換えて計算するとそのようになります。)
CT値の単位とは?
重さのg(グラム)や長さのm(メートル)のようにCT値にも単位があります。
それが、HU(hounsfield unit:ハンスフィールドユニット)です。
実用的なCT装置の最初の開発者であり、CT値の提案者でもあるハンスフィールドさんからつけられたそうです
キャリブレーションとは?
CT値とは、最初から装置が勝手に認識しているのではなく、使用者が教えてあげる必要があります。
その行為をキャリブレーションといいます。
キャリブレーションでは、CT装置で水を撮影し、「これが水だよ。これから、こんな濃度で表現してね」という認識をさせる作業のことです。
ただ常に水のCT値を測定し基準として認識させるには頻繁に純粋な水を様々なエネルギーのX線で照射しデータを得る必要があるため大変な作業です。
そこで、実はCT値には水以外にも基準となる物質が設定されています。
それが、空気です。今まで水を基準に相対的にCT値を定めているといいましたが、空気もCTでは決まった値の一つとなっており、-1000HUとされています。
そのため、CT装置のガントリー内に何もない状態を作り、様々なエネルギーのX線の情報を収集し、いずれの条件下で照射されたX線であれ空気が撮影されたならば、CT値を-1000HUと表現するように認識させることで、簡易的にCT値の調整を行うことができるようになっています。
この空気でキャリブレーション作業を、エアーキャリブレーション(Air calibulation)と言い、最近の装置では開始スイッチさえ押せば自動的に行われるように設定されていることがほとんどで毎朝、行うことが推奨されています。
キャリブレーションとは、正確な診断を行うため、良質な検査を行うために欠かせない作業なのです。
代表的なCT値
CT値について簡単に説明してきましたが、人を構成する代表的な臓器のCT値には大体これくらいになるだろうという値があるので紹介したいと思います。
水の0HU、空気の-1000HUは絶対なので、これと比べて判断すると良いかもしれません。
CT値はこんなことに使われる
あるCT値を基準として、脂肪量や冠動脈の石灰化の程度を測定する検査が行われることがあります。
特に、人間ドックで行われることが多いでしょう。
その検査名は
・脂肪量測定CT
お腹の脂肪量を測定し、メタボリックシンドロームの診断の目安になっています。
脂肪量を測定するときに、使われるのがCT値で、代表的なのは-30~-190HUというCT値を脂肪のしきい値としているようです。
・カルシウムスコアリング
動脈に石灰化が起こると、狭窄や梗塞が起こりやすいと言われており、その診断に使われる検査。
石灰化かどうか判断するのに、CT値が使われています。
その他にも、肺の疾患の評価など、様々な診断指標に使われ始めています。
CT値の注意点とは?
ここまでの話だと、CT値は組織ごと決まった値のように感じますが、それは違います。
CT値はあくまで、水との相対値で、X線吸収係数によって決まるということです。
これは、同じX線吸収係数のものは同じCT値で画像上に表現されることになることを意味しています。
例えば、上の画像のように血管についた石灰化と背骨のような骨は同じようなCT値を示しますし、肝臓や腎臓などの臓器内に臓器そのもののCT値と同じようなCT値を示す病気ができても診断がつきにくいことになるのです。
この対策に、造影剤を使って検査をすることや二種類のX線エネルギーを使用した撮影、デュアルエナジー法が行われることがあります。