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放射線検査とそれに関するノートと参考ブログ

5分で理解したい診断参考レベルとは?

5分で理解したい診断参考レベルとは?

診断参考レベル(Diagnostic Reference Level; DRL)という考えの重要視されつつあります。

 

診断参考レベルは元々、欧州などではメジャーな考えだったらしいのですが、日本では2015年以降に医療での放射線業務に従事する多くの方に広まってきています。

 

放射線被ばくへの関心が高まるうえで、医療被ばくにも不安が広がっているという世の中の流れがこの考えを取り入れようとする行動を加速させているようにも感じられ、これからさらに重要度は増すのではないでしょうか。

 

そこで、今回は診断参考レベルについてザックリと理解したい方のために要点をまとめてみたいと思います。

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医療被ばくと診断参考レベルの関係とは?

そもそも、診断参考レベルとは何なのか?そして、なぜ意識されるようになってきたのでしょうか。

 

これを知るには、まず放射線被ばくと医療について知る必要があります。

 

多くの方が認識していることではありますが、放射線は人体に照射されると、被ばく線量に応じて、皮膚に障害が起こったり、生殖腺に異常をきたし不妊になったりなど多くの障害を起こすこと知られています。

 

放射線による障害は、被ばく線量が多くなるほど重篤なものとなるため、被ばくによる影響が心配される要因ともなっています。

 

そのため、放射線被ばくによって健康被害が起こらないために被ばく線量には線量限度という上限が決められており、その線量を超えることがないようにあらゆる場で制限されています。

 

ただ、その一方で被ばく線量に限度が決められていない領域もあります。

 

それが、医療被ばくです。

 

医療の場では、治療や検査といった多くの場で放射線が使用されていますが、この行為によって起こる放射線被ばくには、線量限度いうものは定められています。

 

これは、放射線被ばくによって得られる病気の情報や病気を治す行為に制限がかからないように配慮されているためです。

 

つまり、病気を見つける、治すという放射線を被ばくするよりも大きなメリットが得られる場合には、その行為は正当化され、制限を受けるべきではないという考えがあるのです。

 

では、検査や治療に必要であれば、どんな被ばく線量でも許されるのか?!

 

というと、そうでもありません。

 

医療被ばくには絶対に守らなければならない2原則があります。

 

それが、『正当化』と『最適化』です。

 

正当化:放射線を検査・治療では、被ばくするというリスク以上に疾患を見つけるという利益が大きい場合にのみ行われる

最適化:個々の患者に対して、診断に支障が出ない範囲で被ばく低減を図らなければならない。

 

このように、いくら行為が『正当化』されようと、『最適化』という原則がある以上、被ばく線量を診断や治療に影響がない範囲で低減する努力が求められ続けているのです。

 

このため、いくら医療に必要であっても無制限に被ばくが起こって良いことにならないのです。

 

それでも、被ばく線量が多いのか少ないのかという目安がなければ、減らす努力が必要な領域にいるのかもう十分に被ばく線量が抑えられているのかといった判断がしにくいのは確かです。

 

そこで、使用されるのが診断参考レベルとなります。

 

診断参考レベルとは、多くの病院がどのくらいの放射線(多くはX線やγ線)を使用し、検査や治療に伴いどのくらいの被ばくが起こっているのかを調査し、定められた目標とする被ばく線量値のことです。

 

なので、診断参考レベルがあれば、自分の病院で行っているX線検査の被ばく線量が多いのか適切に低減できているのかを比べることができるようになります。

 

つまり、診断参考レベルは検査などに使用する放射線量の目標値を定め、医療被ばくにおける2原則である『最適化』を行うためのツールとしての役割を果たすものなのです。

 

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診断参考レベルを決めるためには?

では、そんな診断参考レベルとはどうやって決まるのでしょうか。

 

それは、主に以下の3過程が必要となります。

 

➀線量測定

➁アンケート調査

➂設定

 

どういうことか1つずつ解析したいと思います。

 

➀線量測定

診断参考レベルは、多くの医療施設でどのような被ばく線量で検査が行われているのかをまとめたものから設定されるものです。

 

そのため、まずは各々の医療機関が現状、検査で使用している線量がどの程度なのか知る必要があります。

 

そこで、医療機関ごとに線量測定を行い、現状を調べる必要があります。

 

ここでの注意点は、線量測定を行う場合、基準となる測定方法で行うことです。

 

例としては「標準体型の患者」または「標準ファントム」を使用した測定を行うこと。

 

そして、機器ごとに定められた最も標準的な設定条件下(焦点-)で測定を行うことです。

 

線量の測定方法が各々異なってしまっては、単純な比較もできなくなってしまうからです。

 

➁アンケート調査

各々で測定した線量値を、搔き集める作業です。

 

これによって、それぞれの医療機関ではどの程度の線量値で検査を行っているのか集計し調べることが出来るようになります。

 

ただし、アンケートを行う医療機関の数が少なくては信用度が低くなるため、できるだけ多くの調査が必要です。

 

➂設定

必要なデータが集まったら、診断参考レベルの設定になります。

 

診断参考レベルは集計データの75パーセントタイル値(小さいほうから4分の3番目)を設定することが一般的とされています。

 

なので、調査が100機関で行われて設定される場合、調査された医療機関ごとの線量値を小さい順から並べ、75番目に高い線量値を診断参考レベルとして設定することになります。

 

ただ、全ての検査において75%タイル値を診断参考レベルにするというわけではなく、例外が存在することに注意が必要です。

 

その例外となるのは2つ検査項目でその設定値は以下のようになります。

 

➀乳房撮影(マンモグラフィ)

95%タイル値を診断参考レベルとする

➁IVR(Interventional Radiology)

82%タイル値を診断参考レベルとする

 

上記2つは、すでに被ばく線量の見直しがされており、全国的にも標準化が進んでいる検査とされています。

 

つまり、被ばく線量もあまりバラツキが少ないので他の検査に比べ厳しい値を診断参考レベルとしているようです。

診断参考レベルの単位とは?

診断参考レベルは、線量の標準化、つまり医療機関ごとの被ばく線量のばらつきをなくす効果が期待されています。

 

そのため、検査に応じて使用する測定する線量値とその単位を変え、診断参考レベルと普段の検査で実際に使用された線量を比較しやすいようにされています。

 

一覧で示すと以下のようになります。

 

診断参考レベルの使用方法とは?

ここからは、設定された診断参考レベルをどのように活用されていくのかまとめたいと思います。

 

これに関してはいたってシンプル。難しく考える必要がありません。

 

なぜなら、まずやることは、1つ!!比較をするだけだからです。

 

自施設で行われている検査の線量値を調べ、診断参考レベルと比較を行う。これだけです。

 

ただ、少しだけ注意点があります。

 

それは、1回(もしくは1人)などある特定の測定値を比較に用いないことです。

 

線量の測定値は、必ずといっていいほどバラつきがでるものです。ある時は大きめの線量値になれば、小さめの線量値になることもあります。

 

なので、ある特定の値を比較するのではなく、ある程度、数を集め、バラつきの影響が亡くなった状態での平均値または中央値にて比較を行う必要があるのです。

 

そして、自施設の線量値が診断参考レベルより高ければ、現状より線量を減らすことができるのかなど、最適化の検討を行い、低いときでもそこで安心するのではなく、引き続き最適化を意識しより良い最適化の方法を模索する必要があります。

 

診断参考レベルは、新規装置が導入されたり、検査の質が変化したりなど、その時によって変化する値であるため、それに対応して常に最適化を検討し続けることが重要となります。

 

診断参考レベルの注意点とは?

診断参考レベルは、検査での線量値を最適化するための優れたツールではありますが、その一方で、注意点が3つあるので最後に順番に紹介したいと思います。

 

注意点➀標準体型の患者に対する値であること

診断参考レベルは、標準体型の患者さんに対して設定された値です。というのも、診断参考レベルを作成する際に使用したデータは『標準ファントム』、『標準体型の患者さん』だからです。そのため、標準体型に比べ、大きい方や小さい方に対しては、線量値が過小(もしくは過大)評価になってしまう危険性があります。

そのため、少し大きめの方が集まりやすい施設などがあれば診断参考レベルよりも高い線量値を用いていることが考えられるため、自ずと平均値も高くなり、診断参考レベルの範囲で線量を抑えようとすると、診断に影響を与えることがあります。

 

注意点➁診療上の優劣に用いない

診断参考レベルは絶対に超えてはいけない値ではありません。患者さんの体型や検査内容によっては超えることも十分にあり得る値です。

そのため、診断参考レベルの範囲内に線量値に抑えられているから優れている、または超えた線量値になってしまっているから検査が劣っているという単純な評価はできません。

あくまで、診断参考レベルは参考の値であり、『正当な理由』があれば超えても大丈夫な値です。

 

注意点➂国や地域ごとに設定されるべきである

放射線被ばくへの意識問題は地域や国々によって変わります。被ばくに敏感な人種があれば少し鈍感な地域もあるためです。診断参考レベルはその意識に合わせて設定する必要があります。

また、日本人と外国人では体格の違いが少なからずあります。これは、日本と外国では標準体型の基準が異なることにもなるので、自ずと診断参考レベルの値も変わってくることになります

らどちゅー

放射線に携わるお仕事をさせてもらっています。 経済情報を読んだり、読書が趣味と、 まぁインドア派の典型です。 そんなんで、毎日助けてもらっています。

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