%e8%a2%ab%e3%81%b0%e3%81%8f%e7%8a%b6%e6%b3%81%e3%81%a8%e7%b7%9a%e9%87%8f%e9%99%90%e5%ba%a6%e3%81%ae%e9%96%a2%e4%bf%82%e3%81%a8%e3%81%af%ef%bc%9f-2

被ばく状況と線量限度の関係とは?

放射線防護という観点で考えた場合に、放射線被ばくとは以下の3つの状況に分かれると考えられています。

 

➀計画被ばく状況
➁緊急時被ばく状況
➂現存被ばく状況

です。

 

状況によって、どの程度の被ばくが考えられ、そして許容されるのかといった限度値や参考となるレベルが決められています。

 

今回はこの3つの状況についてまとめてみたいと思います。

スポンサーリンク

計画被ばく状況とは?

被ばくが生じる前に放射線防護を前もって計画することが出来る状況のことです。

 

つまり、被ばくが起きる状況が意図的や計画的に引き起こされる状況にあります。

 

被ばくが意図的・計画的に起こされる状況があるのかと考えるかもしれませんが、この状況に分類される被ばくは時に悪意といったものがない状況です。

 

では、具体的にどのような状況なのでしょうか。

それは、以下の3つが主になります。

⑴職業被ばく

放射線を取り扱う職業(業務従事者や診療従事者など)が、業務を行う上で受ける被ばく。

⑵医療被ばく

病院など医療の場において、病気の治療を目的にした被ばく。

⑶公衆被ばく

職業や医療に伴う被ばく以外のもの。放射線利用する状況(原子力施設など)の利用に伴い起こる被ばく。

この他に研究における志願者の被ばくなどが例になりますが、いずれもどの程度の範囲にどの程度の被ばくが起こるのかいったことが合理的かつ事前に予測できる状況となります。

 

では、この計画被ばく状況ではどのような線量限度が設定されているのでしょうか。

 

その個人線量限度をまとめたものが以下の表です。

カテゴリー 部位 個人線量限度
職業被ばく 規定された5年間の平均が20mSv/年
5年間のうち50mSvを超える年があってはならない
水晶体 150mSv/年
皮膚 500mSv/年
手・足 500mSv/年
妊娠している女性 胎児に対して1mSv
公衆被ばく 年間1mSv
水晶体 15mSv/年
皮膚 50mSv

 

また、この他には線量拘束値という値も重要です。

 

線量拘束値とは、計画被ばく状況において放射線を発する源(線源)を管理するうえで個人が受ける被ばく線量の制限値で、その値をまとめたものが以下の表となります。

カテゴリー 区分 線量拘束値
職業被ばく 20mSv/年以下
公衆被ばく 一般 1mSv/年以下
放射性廃棄物処分 0.3mSv/年以下
長寿命放射性廃棄物処分 0.3mSv/年以下
長期被ばく 1mSv以下 かつ0.3mSv/ 年を超えない値
長寿命核種からの長期処分 0.1mSv/年以下
医療被ばく 生物医学研修の志願者(社会へのメリットが少ない) 0.1mSv未満
生物医学研究の志願者(社会へのメリットが中間) 0.1~1mSv
生物医学研究の志願者(社会へのメリットはあるがそれほど大きくない) 1~10mSv
生物医学研究の志願者(社会へのメリットが大きい) 10mSv未満
介助者と介護者 5mSv(1事例ごと)

上の表に示されているような線量拘束値を超えることは、防護が最適化されているとは言えない状況です。

 

この場合は、対策が必要となります。

 

具体的な対策としては、主に以下の3つです。

 

⑴防護が最適化されているかどうかの確認

⑵最適な線量拘束値が選択されているかどうかの確認

⑶容認できるレベルにまで線量を下げる工程が適切かどうかの確認

スポンサーリンク

緊急時被ばく状況とは?

緊急時被ばく状況とは、その名の通り急を要する防護対策と、長期的な防護対策が必要とされている状況です。

 

計画被ばく状況は被ばくが起こる状況を前もって把握できていましたが、その一方、緊急時被ばく状況は、前もって把握できていない場合です。

 

もっと具体的な例を踏まえると以下の3つが挙げられます。

 

⑴突発的な事故(原発事故など)

⑵テロなど悪意のある行動

⑶それ以外の予想できなかった好ましくない状況

 

上記の3つのような事態とは本来、予測できるものではありません。

 

そのため、実際に起こってしまった場合には、状況に合わせて柔軟に被ばく防護対策を進める必要があるのが特徴です。

 

また、こういった状況では、被ばくの範囲や量を制御できている状況とはほど遠いため、線量が短時間に高レベルにまで達する可能性があることに注意が必要です。

 

つまり、確率的影響だけなく確定的影響にも注意を払うことが重要です。

 

そこで、緊急時被ばく状況では被ばく量による両影響を考慮し参考レベルというもので計画かつ最適化されるべきといわれています。

 

いわば、緊急時なので予測できにくく最悪でもこの範囲までの被ばく量で留めておけば重篤な確定的影響を回避できるはずだというレベルです。

 

では、参考レベルとはどのような設定になっているのでしょうか。

 

その、実際の値をまとめたものが以下のものになります。

 

カテゴリー 区分 参考レベル
職業被ばく 救命活動(情報を知らされた志願者) 他のものへのメリットが救命者のリスクを超える場合は線量制限なし
他の緊急救助活動 1000または500mSv
他の救助活動 100mSv未満
公衆被ばく 1つの全体的な防護戦略に含まれる対策 状況に応じて
20mSv/年~100mSv/年

 

と、値が決められていますが、この値までなら大丈夫であろうという考えで行動するのではなく、どのような場合であっても被ばく量をより低いレベルへの低減を目指した努力は常に必要となります。

現存被ばく状況とは?

計画被ばく状況が事前に被ばくが起こる状況を把握できており、緊急時被ばく状況は被ばくが起こる状況が起こってすぐに対策を必要とした状況でした。

 

では、現存被ばく状況とはどういった状況なのでしょうか。

 

現存被ばく状況とは、既に被ばくが起こる状況があり管理する必要性がある状況のことです。

 

緊急時に起こった事故後の土地や元々、自然的に放射性物質が多く存在する場所、放射性物質を取り扱う事業所などがその例に挙げられます。

 

この状況は、一見簡単に管理が可能なように思えますが、実は管理が難しい状況です。

 

なぜか。

 

それは、現存被ばく状況では、食物を食べることでの内部被ばくや放射性濃度が高い領域にどの程度滞在し被ばくしていたのかなど個人ごとの行動が被ばくのレベルを決定づける因子であるためです。

 

そのため、被ばくの最適化を考える年間個人線量の参考レベルにも他の2つ状況に比べ被ばくの幅が広いの特徴です。

 

その参考レベルが以下のようになります。

カテゴリー 区分 参考レベル
ラドン 住居内 10mSv/年 未満
(<600bq>
作業場内 10mSv/年 未満
(<1500bq>
NORM,自然バックグラウンド放射線,居住環境中の放射性残渣 状況に応じて
1mSv/年~20mSv/年