現状では放射線技師が、穿刺を行うということは絶対にありませんが、超音波装置を使用し、どのようなことが行われているのかという知識を求められる場合はあります。
そして、その一つが超音波ガイド下穿刺です。国家試験でもどのような目的に行われているのか問われていることがあるので、ある程度知っておかなくてはならないようです。
そこで今回は、その超音波を使用したガイド下穿刺についてまとめてみたいと思います。
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超音波ガイド下穿刺とは?
超音波ガイド下穿刺とは、超音波画像をリアルタイムに観察しながら患者さんへ針を刺す(穿刺)を行う手技のことです。
そもそもなぜ、体に穿刺するといったことをしなくてはいけないのか。
その目的には、大きく分けて2種類あります。
それは、検査または治療のためです。
検査の場合の多くは生検や細胞診と呼ばれています。
これは、他の検査で病気が発見されたけど、『良性か悪性か判断がつかない』、『治療の可否がわからない』ときに実際にその病気の一部を取り、顕微鏡などで細胞を調べ確定診断を得ようとするものです。
一方、治療とはどういった場合があるのか。
代表的なもののなかには、ドレナージと呼ばれる、体内の余分な水分・血液などを体外に抜き取る処置があります。また、栄養を投与するためのカテーテルを挿入するため、門脈などのように体深部にある血管に直接的に穿刺を行う場合になります。
では、どうしてこれらの検査や治療は超音波画像のガイド無しに行うことはできないのでしょうか。
確かに、私の知らないような時代にはあったのかもしれません。
が、その状況を例えるのであれば、暗闇の中で針穴に糸を通すような状態です。よほどの経験と勘が鋭い方であれば、針穴に糸を通すことは可能かもしれません。しかし、どこに針があり穴があいているのか事前にわかっていようと、実際に糸を通すのは至難です。
同様に、全く見ることができない体内に病気に穿刺し、検査や治療を行うことは困難を極めることになります。また人の体を相手にする場合はそれだけではありません。別の正常な臓器や血管に穿刺してしまうといった危険性を孕むことになるのです。
つまり、なんの誘導となるものがない状態で穿刺を行うことは、ただ難しいだけでなく、大きなリスクを冒すことになり、利益どころか不利益を患者さんにもたらすことになるかもしれません。。。
そこで、使用されるのが、X線や超音波といったリアルタイムに画像を確認できる装置となります。
体内を写す画像上で、目的となる臓器や腫瘍、血管と穿刺する針の位置関係を確認することで、正常な臓器をむやみに傷をつけていないか、目的の腫瘍や血管に正確に穿刺できているのかということを知ることができるのです。
つまり、超音波ガイド下穿刺というのは、超音波画像を車のナビシステムのように針の先を誘導するために使用し、正確に目的の場所を穿刺を行う技術ということになります。
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超音波を利用する利点とは?
そもそも、なぜ超音波装置を使用するのか。
その理由は超音波検査の利点を活かしたもので、以下のようになります。
➀レントゲン画像と違い、超音波画像には深さの情報がある。
➡レントゲン画像は透過画像であるため、位置方向からだけでは奥行きがわからなくなってしまうが、超音波画像では、体表面から目的までの距離を測定することができる。また、レントゲン画像では軟部組織のような腫瘍や血管の描出には造影剤が必要であるが、超音波画像では、軟部組織の観察が可能。
➁腫瘍や血管など穿刺する目的と周囲の正常組織の詳細な位置関係がリアルタイムに観察できる。
➡超音波検査は任意の断層面を得ることも可能であるため、穿刺してはいけない臓器や血管避けられる位置を探し、傷つけるリスクが少なくすることができる。結果、安全に穿刺を行うことができる。
➂腫瘍の内部の状態を把握できるため適切な部位の組織採取を行いやすい。
➡軟部組織の描出に優れているため、腫瘍内部も観察可能。そのため、せっかく穿刺しても診断を得ることができなかったなど、確定診断を得られないというリスクを減らすことができる。
欠点とは?
ただ、そんな超音波ガイド下穿刺でも苦手とする場合もあります。
それは、以下のような超音波画像が得にくい環境下である場合です。
➀骨や空気(肺や腸管ガス)が穿刺目的の腹側にある場合
➡超音波検査は音の反射によって画像化するものです。そのため、音の反射が起こりにくい、伝達がしにくい環境には適していないのです。その体内で適していない環境が腸管ガスの多い部位や肺、骨などになります。
➁深部に穿刺目的が存在する場合や肥満症例の場合
➡超音波検査は体表面から深部に行くにつれ、解像度が悪く性質を持ちます。これは、超音波が深部なるほど届きにくくなるためです。その場合、解像度が悪くなり、穿刺目的となる腫瘍と正常組織の区別がつきにくくなり、穿刺するリスクが高まることになります。
➂正常組織と穿刺目的のコントラストが不鮮明の場合
➡軟部組織の描出に優れている超音波装置ですが、腫瘍など病気のなかには画像上で正常組織とのコントラスト差がほとんどない場合があります。(音響インピーダンスの関係によるもの)この場合、危険臓器を穿刺するリスクが高く成るため、他の画像検査との併用を考慮する必要があります。
代表的な適応とは?
実際に、どのような名前の手技に超音波ガイド下穿刺が行われるのか、一部を紹介したいと思います。
➀生検(乳房、肝臓など)
➁PTBD・PTCD(経皮経肝的胆管ドレナージ;Percutaneous Transhepatic Biliary Drainage)
➂PTGBD(経皮経肝的胆嚢ドレナージ;Percutaneous Transhepatic GallBladder Drainage)
➃PTPE( 経皮経肝門脈塞栓術;Percutaneous Transhepatic Portal Embolization)
➄腎ろう造設・膀胱ろう造設
➅中心静脈穿刺
主に体表面から近く、空気や骨のない環境下にある臓器や血管、腫瘍などに穿刺する場合です。