NEQとDQEの違いとは?

NEQとDQEはX線画像を客観的に評価するのに使われる指標です。

 

ですが、この二つは少し複雑なところもあり理解しにくいところがあります。

 

そこで今回は、NEQとDQEの違いについてまとめていきたいと思います。

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まずは画質評価について考えると・・・

デジタルカメラを購入する際、その画質を知るために、画素はいくつあるのか、拡大してもどの程度綺麗に写すことができるのかというのを気にするように、X線画像でも画質というが重要です。

 

画質が悪いことは、本来あるものが見えないことにも繋がり、結果、あるはずの病気を画像に表すことができない、見つけることができないとなるからです。

 

では、どうやってX線画像の画質とは評価されるのか。

 

その方法は、個別または総合的に分けられます。

 

個別の評価とは、画像の鮮鋭性、コントラスト、粒状性など画像を構成する要素を個々に客観的に評価する方法です。

 

その一例に挙げられる代表的なものを言えば、

➀鮮鋭性ーMTF

➁粒状性ーWS

➂コントラストー特性曲線(H-D曲線)

となるのです。

 

画質を個別に評価することはその画像が何に優れ、何が他に対して劣っているのかという具体的な項目を評価することでは、個々の要素を比較できるためにわかりやすくなっています。その一方で、画像とはあるゆる要素が組み合わさってできているために、最終的には総合的な評価が必要になるためにその評価法が必要になるという面も持っています。

 

そこで、個別ではなく総合的に評価する方法とはないだろうかという観点から使用されるのがNEQやDQEとなるのです。

 

この二つの共通点は、画像のSN比(信号対雑音比)に着目した物理的な評価を行うことにあり、そこから総合的な評価を行うことなのですが、その算出法が異なり、意味がことなってくるので正確に覚える必要があります。

 

では、NEQとDQEとは、なにで、どう違うのでしょうか。

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その前にSN比だけ・・・

NEQとDQEのそれぞれについてさっそく説明したいところですが、その前にSN比について復習したいと思います。

 

SN比とは、信号(Signal)雑音(Noise)の比のことで、画像を構成するのに有用な信号がどの程度含まれ、画像には不要な情報(雑音)がどの程度含まれているのかを比にして荒らしたものとなります。

 

そのため、SN比の値が高くなるほど、真実の情報の多い画像であり、画質自体も良好な画像であり、逆にSN比が小さくほどノイズの多い、画質の悪い画像となるのです。

 

また、SN比とは基本的に撮影に用いられたX線量に依存して高くなる傾向にあります。

 

X線とはいわば、砂絵のようなものです。砂絵は真っ白い粘着シートの上に様々な色のついた砂をくっつけ絵を描くというものですが、その砂がより細かくより多くの量を使用するほど詳細な絵を描くことが出来ます。しかし、砂が荒く、量が少ないと絵は部分的に砂のくっついていないところがあったり、詳細な輪郭まで描くことはできなくなります。

 

X線も同様です。X線と一概に言われていますがX線とは光子という粒子の集団です。その粒子が多ければ、砂絵同様により詳細に細かいところまで表現できた画像を得ることが出来ます。しかし、粒子数が減ると砂絵で砂がつかず抜けたように表現されてしまうように、X線画像でも本来の情報でない雑音がその部分を埋めたり、またその部分が表現されていなかったりとしてしまうことになるのです。

 

そして、多くのX線の粒子が寄与し、より細かく詳細に表現された画像をSN比の良い画像、逆に、粒子数が少なく、ザラザラと荒く表現された画像をSN比の悪い画像ということができます。

NEQとは?

NEQとは、Noise equivalent quanta:雑音等価量子数の略であり、画像を形成するのに使われているX線の光子数を表したものです。

 

画像を作るうえでどれくらいの量のX線が使用されているのかといったことを表すことになります。

 

NEQの値はフィルムシステム系の制度とX線光子数に強く影響を受けるのが特徴です。

 

どういうことか。

 

X線画像とは、X線が被写体を通過して、通過したX線がフィルム系に到達することで形成されます。ただ、この時、フィルム系に到達したX線全てが画像に寄与しているわけではないのです。

 

到達したX線の多くはフィルム系で画像を形成することになりますが、その一部はフィルム系すらも通過し、画像の形成に寄与もすることなくそのままになってしまいます。

 

そのため、NEQの値とは、実際にフィルム系に入射したX線光子数ではなく、画像を見て画像形成に役立ったX線光子数だということです。

 

そのため、フィルム系の中でX線の損失が多くなるほどにNEQの値は低下することになります。

 

一例をあげるならば、

➀受光系のボケが多いほど記録されるX線光子数が減る。
➁増感紙などで加わるノイズが多く、X線光子がノイズに埋もれてしまい画像形成する光子数が減る。

となり、このようにNEQはフィルムに関する受光系システムのボケやノイズに大きく関係することになります。

 

その一方で、X線光子数が増加するほどに画像を形成する光子数は相対的に増加するためにNEQの値は高くなる傾向にあるので、X線量が多ければ綺麗な写真が撮れるといった印象はこの原理の元から生まれているのかもしれません。

 

ちなみに、なぜNEQは総合的な画像評価と言われているのでしょうか。

 

NEQの定義式は、出力画像のS/Nの2乗で表されます。

 

もっと詳しく分解していくと、

NEQ=出力画像の(S/N)²=(出力信号)²/(出力ノイズ)²

となります。

 

では、出力信号と出力ノイズはどう表現されるのかというと。

 

出力信号=log₁₀e・γ(特性曲線の傾き)・MTF(変調伝達関数)

出力ノイズ=ノイズ分散のスペクトル
(出力ノイズ)²=(ノイズ分散のスペクトル)²=WS

となります。

 

よって、NEQの式を改めて表現すると、

となるのです。

 

よって、NEQを求める式の中には、個別に画質を評価する項目であるコントラスト(特性曲線)、鮮鋭性(MTF)、粒状性(WS)の全ての項目が含まれていることになるので、NEQは画質の総合的な評価尺度として使用されていることになります。

DQEとは?

NEQは、いわば「出来上がりの画像の質を示す値」であり、適正濃度を得るための照射線量が 決まっているようなアナログ系システム(スクリーン/フィルム系)に対しては、客観性が高く有効な方法といわれていました。

 

が、その一方で、デジタル系では、X線量を増減させても画像形成が可能であり、X線量によって増減してしまうようなNEQの値を評価に用いるのは適さない場合があったのです。

 

そこで、NEQと関連したDQEが使用されることが一般的となったのです。

 

では、DQEとはなんなのか。

 

DQEとは、Detective Quanta Efficiency:量子検出効率のことであり、NEQの値を実際に照射した光子数で割ったものです。つまり、DQEは検出器に入射したX線光子数も考慮にいれた値なので、照射したX線がどれほど効率よく画像の形成に役に立ったのかという評価にもなります。

 

このため、DQEを求める式に関してもNEQまでを理解していれば簡単です。

 

DQE=入力と出力のS/Nの二乗の比
=(S/N)²in/(S/N)²
=NEQ/q

q:照射したX線光子数

となります。

 

もっと詳しく表すのであれば、

となります。

 

NEQの時にも言いましたが、照射されたX線光子の全てが画像の形成に使われることはありません。必ず、画像形成に寄与しない損失するX線が存在します。

 

そのため、DQEの特性上、その値は1を超えることはありません。
また、与えられた入射線量、が一定である場合は、DQEがNEQに比例するので、両者の画質の評価結果は一致する。

 

さらにDQEの値は、被ばく線量にも大きく関わることになります。

 

DQEの値というのは、そのまま使用している検出器の能力を表すようなものです。

 

どういうことかというと。

 

DQEが高いほど、照射されたX線を効率よく画像形成に使用していることになります。これは言い換えれば、DQEが高いほど少ないX線量でも画像を形成を行えることになるのです。一方で、DQEが低い検出器であるほど、照射されたX線を画像形成に効率よく使用することができないため、良好な画像を得るためには、より多くのX線量が必要になってくることになります。

 

最後に一つだけ注意が必要です。

 

それは、DQEの限界についてです。 DQEは、鮮鋭性と粒状性のバランスに関する情報を与えないため、その値が同じであっても同じ見え方をする画像であると判断することができません。

 

つまり、DQEがそのまま物理的画質と考えるのは罠が潜んでいることになるのです。

 

それでも、問題点を理解した上で、画質を表現するひとつの“めやす”として、NEQとDQEを参考にすることは現在も多いため覚えておいて損はなさそうです。