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肝胆道シンチグラフィとは?

肝臓の機能には、胆汁の分泌と排泄も含まれており、これがないと脂肪やタンパク質の分解に問題が起こったり、体に黄疸と呼ばれる症状となって現れてきます。

 

肝臓からの胆汁の分泌と胆道系による排泄という体内の働きは、とても重要な要素であるのです。

 

そこで、今回はその肝臓機能の一つである胆汁の分泌から排泄が正常に行われているのかどうか調べる検査である、肝胆道シンチグラフィについてまとめてみたいと思います。

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胆汁の働きとは?

単に、検査内容だけを覚えても、面白みも少ないので、簡単に胆汁の働きについても触れてみたいと思います。

 

胆汁とは、肝臓から1日に500~800mlほど分泌される薄い黄色な液体です。肝臓で分泌された胆汁は胆嚢に溜められ、濃縮されると黒っぽく色が変化していきます。

 

その後、胆嚢から総胆管を通り、ファーター乳頭と呼ばれる腸への入り口を通過して、十二指腸へと排泄されます。

 

胆汁には消化酵素が含まれていませんが、十二指腸で膵液と一緒になることで、胆汁が膵液の持つ消化酵素を活発にして、脂肪やタンパク質を分解して腸から吸収しやすくします。

 

さらに、脂肪が分解されるとできる脂肪酸は吸収されにくくなるため、この脂肪酸を吸収しやすくする働きもあります。

 

最終的には胆汁は腸から吸収されます。

 

その後、胆汁はまた肝臓に戻り、そしてまた胆汁として分泌される腸肝循環と呼ばれるグルグルとサイクルを回っていることになります。

 

この一連の流れである胆汁の分泌と排泄までを調べるのが肝胆道シンチグラフィです。

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使用する放射性医薬品とは?

⁹⁹mTc-PMT(N-ピリドキリルー5-メチルトリプトファンテクネチウム)

 

この放射性医薬品の特徴は、当然ながら放射線を発する薬品であるということと同時に、胆汁の動向に則した生理的動態を示す点です。

 

どのような特徴かもっと具体的に説明します。

 

正確に表現するのであれば、PMTとは、生理的動態がビリルビンに類似しています。そもそも、ビリルビンとは血液で肝臓に運ばれたのち胆汁中に排泄される黄色い色素を持ったモノです。ビリルビンが含まれるから胆汁とは、最初は薄い黄色なのですが、この肝臓に取り込まれ、十二指腸へ排泄されるという動向はPMTも同様なのです。

 

なので、⁹⁹mTcーPMTは静脈に注射されると血流によって肝臓に運ばれ、血中から速やかに肝細胞に取り込まれます。その後、細胆管、肝内胆管、胆嚢、総胆管と経由し、ファーター乳頭から十二指腸、小腸へと排泄されていくことになります。

 

ただ、PMTの動向で胆汁とは異なる点があることも注意が必要です。

 

胆汁は十二指腸に排泄されたあと、腸内で再吸収され、もう一度、肝臓へと戻るといった動向を示しますが、PMTは腸内では再吸収されることはありません。さらに、都合の良いことに尿中への排泄もすくないため、腎機能に排泄が影響されることはないのです。

 

このような性質があるため、胆道系の機能評価にこの薬剤が使用されているのです。

検査の流れとは?

・投与量とは?

⁹⁹mTcーPMTは内容量2mlほどの液体で185MBqほどの放射能を持っています。

成人:全量投与

小児:減量するが、体格によって投与量が変化するのが一般的です。

・前処置

検査4~6時間前の程度の絶食が必要です。

胆嚢は、食事をすると胆汁を十二指腸に排泄するため、縮小してしまいます。この状態で胆嚢の検査を行っても、描出能が低下してしまうのです。そのため、胆嚢の描出能を高めるためにも絶食が好ましいとされています。

 

その一方で、腸管への排泄を見る検査の場合には、絶食しないほうが胆汁の排泄が促されるの同様に、薬剤の移行も速いとされているため、検査目的と照らし合わせる必要があります。

・撮影法

➀仰向けで検査台に寝る。

 

➁⁹⁹mTc-PMTを静脈注射。
液量が少ないため、注射ライン内や血管内に薬剤が残らないように生理食塩水で後押しが必要。

 

➂心臓および肝臓が視野内に入るようにガンマカメラを設定する。

 

➃投与と同時に30s×128フレームで60分間のダイナミック撮像。

 

1フレームに30秒の収集時間を使い、合計128フレームを撮像すると考えてもよい。また、⁹⁹mTcーPMTは血中から速やかに肝細胞に取り込まれ、胆道系を経由し、十二指腸、小腸へとは排泄されるため、ダイナミック撮像が基本となる。

 

➄肝炎、胆道狭窄など排泄が遅れる場合には、追加でプラナー撮像を行う。
2~4時間後、胆嚢描出や腸管排泄が見られない場合は、24時間後など。
正面・背面像を収集。

 

➅腸管へ排泄が認められ、肝臓内に薬剤が残っていなければ、検査終了。

 

と、色々と書きましたが、患者さんの立場になってみれば、絶食をすることと検査台で注射をされること以外は、寝ているだけで終わるような感覚になります。それほど、やってもらう内容がないでしょう。

正常と異常とは?

この検査はダイナミック撮像で得られた、データからへパトグラムと呼ばれるTAC(時間放射能曲線)によって解析が行われるが特徴の一つです。

 

肝細胞にPMTが取り込まれていけば、肝臓の放射能があがり、胆道系へとPMTが排泄されていけば、胆道系で放射能が上昇するようになります。その一方で、胆道系に排泄が進むほど肝臓内の集積は少なくなっていきます。

 

この動向を、グラフを使い、客観的に見ることで排泄が遅れているのかどうか判断することができるのです。

・正常例

投与5分後からで肝臓が描出され、10分後以降では、胆道から腸管が描出されます。

 

60分では、胆嚢や腸管に投与した薬剤の大部分が移行し、肝臓の描出はほとんど見られなくなります。

心臓への集積は、10分後以降ではほとんど見られません。

出典:https://www.rada.or.jp/database/home4/normal/ht-docs/member/synopsis/030019.html

・異常例

➀高度肝機能障害
肝臓の集積が低下し、心臓の血液プールが10分以降も残存する。

➁先天性胆道閉鎖症
腸管への排泄が見られない。

➂先天性総胆管拡張症
胆道系の拡張と拡張した腸管内に薬剤の停滞する。