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MRI原理⑳:組織抑制法の磁化移動(MT)法とは?

MRI原理⑳:組織抑制法の磁化移動(MT)法とは?

組織抑制の一つである磁化移動は、MRアンギオグラフィーで使用される方法です。

 

ただ、この内容を意識されている場合のほうが少ないくらい自然と使用されているように感じられることがあります。

 

なので、今回は磁化移動(MT)法とはなにかまとめてみたいと思います。

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磁化移動(MT)法とは?

磁化移動(magnetization transfer:MT)法は、タンパク結合水を抑制する方法です。

 

では、どういったものか具体的にお話していたいと思いますが、その前に少しだけ復習をしたいと思います。

 

脂肪と水の共鳴周波数には差があるというお話です。

 

脂肪分子中に化学結合し手プロトンは、周りにある脂肪組織よって外部磁場をある程度遮蔽してしまっています。そのため、脂肪組織と水のプロトンとでは、3.5ppm(100万分の1)ほどの違いではありますが、共鳴周波数の差が生まれてしまっているのです。

 

このため、脂肪の歳差運動は1.5Tの外部磁場下では、222Hzほど水よりも遅く改定していることになります。この事実を利用し、脂肪の歳差運動周波数に狙いを定め、RFパルスを送信し、脂肪からの信号を抑制した方法が、選択的化学シフトを用いた脂肪抑制法、いわゆるCHESS法です。

 

ここまでの話は脂肪と水の共鳴周波数の違いを利用したものですが、実は、同じように歳差運動の周波数に違いが生まれること他の高分子中のプロトンでもあります。

 

その一例として挙げられるのが、タンパク質結合水の中に含まれるタンパク質と結合したプロトンです。タンパク分子中に存在しているか分子外部に直接結合されています。

 

なので、磁場による影響はタンパク質結合水と普段、一般的に考えられる『自由水』とは異なるのだという認識が必要になります。

 

さらに、このような高分子は、タンパク質の種類が多いことと同様、数多くの異なる分子構造を持っており、それぞれが異なる磁場による影響を受けているのです。タンパク質結合水と単に言っていますが、その種類はとても多いのです。

 

そのため、タンパク質と結合したプロトンは、とても広い磁場変化になるまで遮蔽されることもあり、時には局所磁場を増やす方向にも働くこともあり、その結果、歳差運動周波数を増やすこともあるのです。

 

つまり、脂肪分子同様に磁場を遮蔽する働きをして歳差運動周波数が小さくなるプロトン、逆に磁場による加速から歳差運動周波数を大きくする方向に働くタンパク質結合水があることになります。

 

よって、タンパク質結合水の歳差運動周波数は脂肪や今まで考えられていた水(自由水)とは違い、幅が広くなってしまっているです。

 

図で表すと下のようになります。

mt1

 

磁化移動(MT)法は、これまでの自由水とタンパク質結合水の歳差運動周波数帯域の違いを利用した方法です。

 

MT法では、自由水の歳差運動周波数よりも高い周波数と低い周波数に対して、スペクトル選択的パルスを送信します。すると、このいわゆる磁化移動パルスは、パルス照射により信号飽和状態になり、高分子と結合したプロトンから出る信号のほとんどをゼロになるのです。結果、一つの組織の信号抑制となるのです。

 

ただ、ここで一つ注意しておく必要があります。

 

それは、MT法によって影響を受けるのは、タンパク質結合水だけでなく、自由水もある程度の信号抑制効果があり、ゼロとはいきませんが、信号低下が起こることになります。

 

なぜか。

 

それは、高分子に結合したプロトンは、常に周りを取り囲んでいる自由水プロトンと入れ替わりが起こっているためです。なので、信号を出すことができなくなったタンパク質と結合したプロトンは、最終的には自由水に含まれるプロトンの中に紛れ込れこんでしまい、自由水プロトンからの信号も低下させる働きをしてしまっているのです。

 

mt2

 

プロトンが移動しているということは、磁化も移動しているということになるので、この効果もまた”磁化移動(magnetic transfer:MT)”と呼ばれています。

 

MT法は、特定の組織からの信号を低下させる効果があるため、MRアンギオグラフィー時にバックグラウンドとなる脳実質の信号を抑制する目的に使用されます。

らどちゅー

放射線に携わるお仕事をさせてもらっています。 経済情報を読んだり、読書が趣味と、 まぁインドア派の典型です。 そんなんで、毎日助けてもらっています。

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