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CT画像とSD値の関係とは?

CT画像に限らない話では、ありますがX線画像にはノイズと呼ばれる成分が必ず含まれることになります。

 

そして、ノイズと関係するのがSD値です。

 

SD値というのは、統計的な用語で聞いたことが多い方も多いかもしれませんが、CT画像においてSD値がどのような役割を担っているのか、ややこしくなっている方も多いのではないでしょうか。

 

そこで、今回はSD値に焦点を絞り、まとめてみたいと思います。

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そもそもSD値とは?

SDとはStandard Deviationの略であり、標準偏差という意味です。

 

では、標準偏差とは何なのか?

 

例えば、平均値60点のテストあり、そのテストで70点を取ったとします。テストの平均点は、学校でよく言われ平均点以上ならいいかなどと満足された方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、平均点以上の点数を取っていても、周りを見てみるとみな平均点以上で、自分が下から数えた方が早い位置にいたらどうでしょう。

 

一転して、ちょっとした危機感に襲われるのではないでしょうか。平均以上の点数を取ったのになぜと思うかもしれません。

 

実は、これにはしっかりとしたカラクリがあるのです。

 

多くのかたは平均点と聞くと、その点数を中心に上にも下にも均等にいる、つまり、みんなの中間にいると思いがちです。

 

でも、そうでない場合があるのです。どういうことか。

 

例えば、テストの点数分布が「0点、5点、10点、70点、80点、80点、82点、85点、93点、95点」(平均点60点)の場合です。この場合、多くの人は80点以上取れているのに対して、ごく一部の人が平均を下げたテストであることになります。

 

つまり、70点と一見高得点と思われる点数でも、そうではなかったのです。むしろ勉強不足ともいえ、満足している場合ではありません。

 

逆に、テストの点数分布が「50点、52点、54点、60点、60点、60点、61点、61点、70点、72点」(平均点60点)の場合も考えてみましょう。この場合、先ほどとは違い、みな点数に差がでなかったようです。それでも、上から2番目の点数であるということは、多くの人が出来なかった問題も正解できたことになり、むしろ良く出来たと褒めらえるほどえす。

 

このように、平均という数字だけでは、全体を把握するには情報が足りず、全体から見た場合に良く出来たのかできなかったのかわからないのです。

 

そこで、全体を把握するのに使用されるのが標準偏差です。

 

標準偏差とは、平均値からばらつきの大きさ(または、平均値からのバラつきの幅)を表したもので、数値が大きくなるほどバラつきが大きく、数値が小さいほどバラつきが小さいことを意味するものです。

 

上の例でいえば、「0点、5点、10点、70点、80点、80点、82点、85点、93点、95点」の平均60点であろうと、下は0点(平均点からの-60点)から上の95点(平均点から+35点)の人がいたりと、標準偏差で表すと38.5ととても大きいな数値を示します。

 

つまり、バラつきが大きいテストで平均点があてにならないケースであるといえるのです。

 

一方、「50点、52点、54点、60点、60点、60点、61点、61点、70点、72点」(平均点60点)の場合では、下は50点(平均点から-10点)から上は72点(平均点から+12点)であり、標準偏差は7.03と先ほどに比べとても小さな値をしてしています。

 

よって、みなが同じような点数を取ったテストであり、平均点=真ん中の点数であるといえるのです。

 

このように、標準偏差の数値を見ることで、その平均値がどのような数値の組み合わせによって求められたものかわかることができるのです。

 

標準偏差の理解は、求め方も含めて行うとさらにわかりやすいのですが、ここからは、他のサイトに任せたいと思います。

 

Google先生に聞けば一発です。ただ、標準偏差でもう一つだけ覚えておくとよいことがあります。

 

それが、標準偏差の「68%と95%のルール」です。

出典:ja.wikipedia.org-

もし、データの確率分布が正規分布と呼ばれる上図のような形をしていた場合ですが、

 

「平均-標準偏差」~「平均+標準偏差」内に、データが約68%の確率で存在し、

「平均-2×標準偏差」~「平均+2×標準偏差」内に、データが約95%の確率で存在する

 

ことがわかっているのです。あるテストの点数分布が正規分布に近似できて、平均点50点・標準偏差10点だったのなら、

 

40点から60点の間に受験者の約68%が存在して、
30点から70点の間に受験者の約95%が存在している

 

ということになります。

 

しかも、このルールはデータ数が1,000を超えた確率分布は、正規分布に非常に近い分布になるケースが多いことが分かっています。X線画像を構成する光子数は、1,000を超える数で作られているため、正規分布に沿っているといえうのです。

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CT画像とSD値の関係とは?

では、標準偏差について少し理解したところで、ここから本題についてまとめたいと思います。

 

CT画像とSD値にはどのような関係があるのでしょうか。

 

それは、CT値の変動の大きさを表しています。

 

例えば、CT値50HUの臓器があっとしましょう。それが、腹部であれば設定SD10程度で撮影され、画像が再構成されます。

 

すると、再構成されたCT画像上でCT値は本来50HUの臓器であってもSD10分だけずれ、CT値40~60HUで68%を表現され、CT値30~70HUの間の値で約95%が描出されていることになります。

 

つまり、本来CT値50HUの臓器であっても、ある部位では30HU、その他の部位では60HUでも表現されていることになるのです。

 

これは、病変のない正常な臓器であっても起こることになります。そして、本来のCT値からかけ離れ、臓器描出に邪魔となるものをノイズといっているのです。

 

これは、子どもことに遊んだ砂絵のようなものです。

 

覚えていないかたもいるかもしれませんが、砂絵とは砂を振りかけて絵を描くものです。砂絵では、きちんと決まった場所に決まった色の砂を振りかければ綺麗な絵が描けますが、これってよく、砂が余るんです。

 

本来、余った砂は別の容器などに避けておくのですが、片づけずに次の色の砂を振りかけると砂が混じってしまい、余計な色の砂がついてしまうことがあります。余計な色の砂は、本来つくはずだった色の邪魔をしてしまい、出来上がりの絵の完成度を下げてしまいます。

 

この、本来つくはずのない余計な色の砂が絵にとってのノイズです。ノイズは綺麗な絵の完成を阻害させるものなのです。

 

とにかく、公式のように覚えていただきのは、

「SD値が大きい=ノイズが多い画像」

と、言うことです。

 

この理由は、SD値が大きな値ほど、臓器の平均的なCT値からかけ離れたCT値の割合が多くなるからです。平均的な数値からかけ離れた数値が多い画像、つまり、ノイズが多い画像となるのです。

 

こういったことから、ノイズが多い画像では、体内の様子が正確に画像上で表現されていないことが考えられます。

 

つまり、正常組織と濃度差の少ない病気が体内にあっても、ノイズによって隠されてしまい、病気を発見できないということになりかねないため問題になるのです。

 

このことは、よく低コントラスト分解能が低下すると表現されます。低コントラスト分解能は、画像上での濃度差が低い2つの物質を見分ける能力のことを言い、ノイズの量と大きく関わっているのです。そのため、極力ノイズの少ない画像が理想的であるといえるでしょう。

ノイズの原因とは?

では、どういった要因がノイズの多い画像を作る原因となるのでしょうか。CT検査でノイズの原因のほとんどは量子ノイズ、すなわちX線検出量の統計的変動であると言われています。

 

これは、検出器へ届くX線量が少ないということです。

 

X線量が少ない場合、検出器の届くX線強度が強いものや弱いものと変動が大きくなりやすくなります。

 

砂絵だと、大きい砂と小さな砂がわかりやすい形で混在しているようなものです。

 

結果、変動が大きくなると結果的にノイズが多くなる傾向にあるのです。

 

ノイズの原因には、その他に電気系のノイズやアーチファクトも要因となりますが、その影響はわずかです。

ノイズへの対策とは?

では、ノイズの少ない画像を作成するためには、どのような方法があるのでしょうか。

 

それには、以下の3つのことが言われています。

➀線量増加

これが、もっとも抜本的な改善方法であるといえます。ノイズの原因は画像再構成に使用されるX線量が限られていることです。

 

つまり、情報量不足です。そこで、画像作成の情報元となるX線量を増加させることで、ノイズ量を減少させることが可能となるのです。

 

ただ、この方法には懸念があります。

 

それは、X線量を増加させることでノイズの少ない良好な画像を得ることができますが、その一方で、被ばく線量が増加することになることです。しかも、線量とノイズの関係には、線量の1/√(ルート)でノイズは改善することがわかっています。

 

そのため、ノイズを改善するためには線量を最低でも2~3倍にする必要があるため、ノイズ改善に伴う被ばく線量増加率のほうが多くなってしまうのです。よって、実際の撮影では、画像ノイズ量と被ばく線量を天秤にかけ、診断に有用な画像を提供する必要があるといえます。

 

現在では、頭蓋内(脳)や胸、お腹、骨など目的となるものに合わせて、X線量を決めています。

➁スライス厚を厚くする

線量不足によるノイズの上昇を別の点で改善させる方法であるといえます。CT画像は一枚の画像にスライス厚と呼ばれる厚みを持っています。

 

この厚みが薄いほど、画像を構成するX線量が少なくなってしまうため、自然とノイズ量が多くなる傾向があります。そこで、スライス厚を厚くすれば、一枚の画像を構成するX線量が増加するため、ノイズの減少に繋がるのです。

 

ただ、スライス厚を厚くすると、細かな構造を観察しにくくなる欠点もあります。

➂ソフトな再構成関数

ソフトな関数(軟部用関数)は、高周波領域のノイズを抑制する効果があります。すなわち、ザラザラとした画像の原因を取り除くのがソフトな関数の役割です。

 

しかし、高周波領域の成分は輪郭をクッキリとさせるのに使用されている成分でもあるため、ノイズを抑制させる一方で、被写体の細部の構造を見えにくくしてしまうこともあるので注意が必要です。

 

つまり、「ソフトな関数=ノイズの抑制」ではなく、実際にはノイズを減らしたわけではなく、画像を観察するうえで目障りになりやすい高周波成分を減らした効果により、ノイズを減らした効果が強調されていることになります。

➃ウインドウ幅を広げる

この対策は、実際にノイズを減らすわけではありません。ただ、ノイズは平均的なCT値とは大きく異なるCT値のことです。

 

つまり、その影響をなくすような観察条件を用いることで、ノイズによる画像観察への影響を少なくできるのです。ウィンドウ幅が狭くなれば、コントラストがそれに応じて高くなり、ノイズも目立って観察されますが、逆にウィンドウ幅を広くすると、ノイズは見えにくくなるのです。

 

この性質があるので、ウィンドウ幅を広めで観察する肺CTでは低線量の検査を可能としている根拠の一つにもなっています。