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MRI:1.5Tと3.0Tの違いとは?

最近では、3TのMRI装置を使用する施設も多くなり、以前に比べてだいぶ定着してきました。ただ、少しMRIについて勉強してみると3.0Tへの漠然とした思いは以下のようなものです。

 

➀1.5Tに比べて3.0Tは2倍の磁場だからS/Nが良い。

➁頭部の専用機では?!

➂SARの制限がうるさくなる

➃MRAが綺麗

 

などなど、様々ですが明確に理解するのは難しいと思われます。そこで今回は、1.5Tに比べて3.0Tのメリットとデメリットについて簡単にまとめてみたいと思います。

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メリットとは?

3.0Tのメリットとして挙げられる内容は、静磁場強度と共鳴周波数が1.5Tに比べて2倍になっていることによる、付加価値のようなものが大きいです。

 

では、その例を以下に挙げたいと思います。

メリット➀:SNRが2倍

これは、一番大きなメリットとして有名かもしれません。

 

SNRとは信号とノイズの比を表したもので、数値が上がるほど画像に占める信号の割合が増え、ノイズによる劣化が抑えられています。つまり、SNRが良いということは高画質な画像を得ることができるのです。

 

では、なぜ3.0TはSNRが良いのでしょうか。

 

それは、何といっても静磁場強度が高いの一言につきます!!

 

SNRとは、静磁場強度(B₀)に比例する関係にあります。よって、人体への無視することができれば単純に高磁場な装置であればあるほど、良好な画質を得ることができるのです。

 

現在、病院など臨床現場で使用されているのは3.0Tまでですが、研究用としては7.0Tまであるそうです。

 

さらに、3.0Tでは高画質画像を得る他に、これまで1.5Tで良好な画像を撮影しようと時間をかけていた画像であっても、元々SNRが高い3.0Tでは同質の画像であれば短時間で撮影することも可能になるのです。

左:3T 右1.5T

メリット➁:磁化率の違いに敏感

単純に1.5Tに比べ3.0Tの磁場環境下では、物質は磁石化しやすい環境であるといえます。これを感受率で表現すると、磁場の二乗に比例して大きくなります。

 

その効果は、BOLD効果を高めfunctional MRIに有利に働いたり、感受率の差を強調して画像化する磁化率強調画像(T2*画像)にも有効に働きます。

メリット➂:Chemical Shift2倍

3.0Tでは、1.5T時に比べ、組織の共鳴周波数が2倍になっています。共鳴周波数は、磁場強度に比例する関係にあるのです。

 

その関係を表にすると・・・

 

この違いがにより、組織間の歳差運動の周波数の違いが大きくなり、周波数分解能が向上します。

 

どういうことか。

 

その例として良くあげられるのが、水と脂肪です。元々、水と脂肪の歳差運動の周波数は3.5ppmずれており、それ分だけ水が速く回転しています。

 

これは、磁場環境下ではさらに変化し、

 

●1.0Tの場合・・・

42.6MHz×3.5ppm=150Hz

●1.5Tの場合・・・

63.9MHz×3.5ppm=220Hz

●3.0Tの場合・・・

128MHz×3.5ppm=440Hz

 

となり、水と脂肪の周波数差は磁場強度とともに大きくなり、組織同士を区分けしやすくなるのです。(周波数分解能の向上)これにより、脂肪の中心周波数にsaturation Plusを印加しやすくなり、より選択的な脂肪抑制が可能になります。

 

ちなみに、1.5Tでは水と脂肪の周波数ピークが近いために脂肪のみ抑制したくても水の一部にも抑制が入ってしまっていたのです。

 

また、ケミカルシフトが原因となるアーチファクトは倍の威力となって画像に出現するので、注意が必要です。

メリット➃:T1延長

そもそもT1値とは組織の歳差周波数がラーモア周波数に近いほど、エネルギーの交換効率がよくT1値が短くなります。

 

そのラーモア周波数は磁場強度に比例する関係を持っているため、磁場強度を上げるほどラーモア周波数も上がってしまい、組織の歳差周波数からも離れてしまい、エネルギーの交換効率が悪くなってしまうのです。

 

結果、T1値が延長するということになります。T1 値が延長するため、造影剤による効果が高くなること。

 

またMRAにて脳実質の信号が1.5Tに比べ低下するので、SNRとIn-Flow効果の向上に相まって血管の描出能が向上します。

 

その差は歴然であり、1.5Tでは見えなかった細かい血管も描出することが出来るようになっています。

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デメリットとは?

メリットの反面、磁場強度が上がることでデメリットとなることもあります。

 

その中には、メリットとして挙げられたものの、時としてデメリットとして出現するようです。

デメリット➀:SARが4倍

SARとは生体の単位体重あたりの吸収電力(W/Kg)のことです。

 

簡単に考えるとならば、電磁波を当てられると、人の体は温まる性質を持っています。
いわば、電子レンジのようなものです。

 

なので、電磁波を人体に照射できる許容範囲が決まっております。
JIS Z 4951(IEC 60601-2-33)

 

SARの式は

SAR∝σr²B₀²α²

の関係があります。

 

SARは静磁場強度(B₀)の2乗に比例することになり、1.5Tに比べると3.0Tでは4倍にもなるのです。

 

さらに、フリップアングル(α)の2乗にも比例するため、180パルスを多く当てる撮影では、装置に制限がかかり、撮影がストップすることもあるようです。

 

対策としては、フリップアングルの弱くする、室温を下げるなどなどあり、装置によってもSAR低減策があるようです。

デメリット➁:磁化率の違いに敏感

メリットにも磁化率の違いですが、反面デメリットにもなります。高磁場下では、物質の磁石化がされやすい環境です。

 

そのため、より磁石化されやすい金属の影響を1.5T時以上に受けることになります。特に、頭部撮影では義歯が影響がでることもあるようです。

 

さらに、磁化率の違いは、実質と空気の境目でも起こりやすい性質を持ちます。

 

よって、副鼻腔部分や拡散強調画像のような磁場の不均一による影響が出やすい環境や撮影では実質の一部が黒く抜けるといった画像が出力されることがあります。

デメリット➂:B₀/B₁不均一

磁場が高くなるほど、装置内の磁場を均一に保つことが困難になります。

 

これは、MRI装置内に人が入っていない時ですらそうであるのに、人が入るとより不均一になりやすくなってしまうのです。

 

頭部のような小さく静磁場を乱しにくく、かつ照射する電磁波を均一にしやすい環境であれば、撮影には問題がでることはありません。

 

ただ、腹部など、半径が大きい場合や水など電磁波が届きにくい環境では均一な励起ができず、画像の一部が描出不能となることもあります。

 

この理由から、3.0Tの多くは頭部撮影では大きな効果を発揮しますが、その反面で体幹部の撮影では1.5Tに劣ることがあります。装置によっては、改善されていることがあるので、一概には言えませんが・・・。

 

デメリット➃:T1の延長によりT1コントラストがつきにくい

メリットでいいましたが、3.0TではT1値が延長します。そのことにより、1.5Tと同様の撮影条件では診断に有用なコントラストが得られないことがあるようです。

 

一部ではT1 FLAIRを撮影するなど、対策を講じているようです。