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【小線源治療】高線量率と低線量率の核種とは?

放射線治療を行う方法には、大きく分けて外部照射と内部照射があります。

 

外部照射は、リニアックに代表されるような、X線や電子線を照射することができる装置で、体の外から放射線をがんに照射する方法です。

 

内部照射は、がんの近くや内部から放射線を照射する方法です。その内部照射には、小線源と呼ばれる放射性物質を使用が一般的ですが、がんの種類によって使用させる小線源は異なってきます。

 

そこで今回は、小線源治療に使用される、放射性物質(核種)についてまとめてみたいと思います。

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小線源治療法とは?

小線源治療とは、放射性を発する放射性物質(RI:radio isotope,放射性同位元素)を病巣の表面またはその内部に置き、照射する方法のことを言います。

 

ただ、放射性物質はむき出しの状態でガン内部に配置されるわけではありません。針状、管状、粒状、ワイヤ状、ヘアピン状、シングルピン状と様々な形の中に、入れて密封してがん治療を行います。

a)ヘヤピン、 b)シングルピン、 c)シード、 d)シンワイヤ

 

このように放射性物質を密封して使用し、内部からがん治療を行うものを密封小線源治療といいます。一方で、密封していない放射性物質を使用する場合は、密封小線源治療といいます。

 

では、この小線源による内部照射治療にはどのような特徴があるのでしょうか?

 

内部照射による治療には、外部照射に比べ、次のような特徴があります。

 

➀がんの内部やすぐ近くに放射性物質を置ける。

➁正常な部位にあたる線量を減らすことができる。

➂呼吸や生理的な臓器の動きによってがんの位置が変わっても放射線照射は影響を受けない。安定して、がんに放射線を照射しつづけられる。

 

外部照射では、呼吸状態や生理的な動きによってがんの位置が計画時と少しズレてしまうことで、計画通りの線量をがんに照射できないことが問題になったりします。

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小線源を使った治療法の種類とは?

では、内部照射と呼ばれる中には、どんな治療が行われているのでしょうか。

・腔内照射

元来、空間の存在する臓器・器官に放射性物質をアプリケータを挿入して、がんの治療を行う方法です。主に、子宮頸がん、子宮体がん、膣がんで行われる方法ですが、教科書的には、上顎洞がん、上咽頭がん、気管・気管支がん、食道がん、胆道がんも適応に含まれます。

 

ところで、突然でてきたアプリケータとはなんなのでしょうか。アプリケータとは、密封小線源(放射性物質)を最適な位置に、そして、最適な照射が行われるように、保持・固定するためのものです。

それぞれの治療部位に対応したものが使用され、種類は豊富です。

 

例えば、子宮頸がんに使用されるのは、以下のようなもので、子宮頸部を囲むようにして最適な線量分布で放射線が照射できるようになっています。

・組織内照射

がんの内部およびその周辺の正常組織に放射性物質(密封小線源)を刺し入れて配置し、照射する方法です。主に、舌がんや前立腺がんに用いられる方法です。

 

・モールド照射(表面照射)

主に種々の材料(プラスタ、歯科用コンパウンド、ラバーフォームなど)を利用してモールドと呼ばれる型を作り、モールドの表面または内部に放射性物質を一定の基準に従って配置して、小線源を照射するべき表面から0.5~4.0cm離して照射する方法。

 

皮膚がんなどの表在性のがん治療に用いられています。

 

ちなみに、身体の内部に放射性物質を留置する期間は、がんの種類と治療法、使用する放射性物質によって異なり、一時的~永久的と様々です。

 

永久刺入(一度、身体に刺入したら二度と取り出さない)する治療の代表としては、前立腺がん治療に用いられる、ヨード125によるシード線源と呼ばれるものです。

どんな放射性物質を使用するの?

使用される具体的な放射性物質の名前が出てきたところで、内部照射に使用される放射性物質を紹介したいと思います。現在では、¹⁹²Ir(イリジウム)、¹³⁷Cs(セシウム)、⁶⁰Co(コバルト)、¹⁹⁸Au(金)、¹²⁵I(ヨウ素)が使用されています。

 

以前には、²²⁶Ra(ラジウム)や²²²Rn(ラドン)が使用されていることもありましたが、これらは²²²Rnガスを発生し、線源内圧の上昇によって密封小線源が破壊されてしまうことがあったようです。

 

すると、漏れたラドンガスが環境汚染をもたらす恐れがあるため、ICRPにより使用停止勧告がされ、日本では使用中止となっています。

 

下には、現在使用されている、5種類の核種を紹介したいと思います。

・¹⁹²Ir(イリジウム)

Ir(イリジウム)は柔軟な金属であり、ワイヤ状やヘアピン状、シングルピン、シードなど種々の形状になって使用されています。また、線源自体が小さいため、挿入し使用されるアプリケータが小さくできるのも特徴です。

 

さらに、線源の強度を表す線量率も低線量率~高線量率まであるため、治療法も多様化しやすく、上にあげた3種類の治療法(腔内照射、組織内照射、モールド照射)に使用されることから、密封小線源治療の代表格ともいえる線源です。

 

ただ、半減期が73.83日と2カ月半近くしかないため、3ヶ月ごとに線源を交換する必要があります。それ以上、使用し続けても、治療に必要な線量が得られないため注意が必要です。

・¹³⁷Cs(セシウム)

¹³⁷Cs(セシウム)はβ⁻壊変によって、¹³⁷mBaになります。この¹³⁷mBaから放出されるγ線(ガンマ線)が治療に利用されているという、なんか周りくどいように感じる核種です。管状や針状で使用され、組織内照射、腔内照射を行います。

ただ、放射線を出す能力がひくいので(低線量率)、線源自体の容積が大きくなりやすく、高線量率を要する腔内照射用には適さないことがあります。

・⁶⁰Co(コバルト)

他の線源に比べて、高いエネルギーを持つガンマ線(1.173MeVと1.333MeV)を放出する核種です。

放射線を出す能力が非常に高く、放出するガンマ線のエネルギーも高いことからガンマナイフと呼ばれる装置で使用されています。ガンマナイフについては別の機会にまとめたいと思います。

・¹⁹⁸Au(金)

金属の王様と呼ばれる金も放射線物質として、治療に使用されることがあります。2.694日と短半減期であり、安定した物質なので、組織内照射の永久刺入線源として使用されています。

・¹²⁵I(ヨウ素)

チタンカプセルの中に入れられ、粒状となって使用されます。その形からシード線源と呼ばれることが多いかもしれません。

 

特性X線とガンマ線を放出する放射性物質ですが、X線はエネルギーが低く治療に利用されることはありません。前立腺がんの組織内照射、永久刺入線源として利用されるのが、代表的です。

線源 線量率 装着期間 使用法
¹⁹²Ir 高線量率
低線量率
一時的 組織内照射
表面照射
腔内照射
¹³⁷Cs 低線量率 一時的 組織内照射
表面照射
腔内照射
⁶⁰Co 高線量率 一時的 腔内照射
¹⁹⁸Au 低線量率 永久 組織内照射
¹²⁵I 低線量率 永久 組織内照射

線量率とは?

最後に、ここまでたまーに出てくる線量率について解説して終わりにしたいと思います。

 

線量率とは、単位時間当りの吸収線量のことです。

 

例えば、100Gyの放射線が照射するとします。その場合、100Gyを照射する方法には、一度に100Gyを照射してしまう場合と、数回に分けて合計で100Gyを照射する方法の2種類のあります。

 

どちらの方法にしろ、結果的には100Gyを照射しているのですが、照射にかかる時間が異なっていることに注意が必要です。

 

同じ装置を使い、1回の照射にかかる時間が同じだとすれば、100Gyを2回に分ければ、2倍の時間がかかり、3回に分ければ、3倍の時間がかかって100Gyの照射を終えたことになります。

 

この時間が重要であり、同じ100Gyを照射するのにも短時間で照射したほうを高線量率、長時間かけてゆっくり照射したほうを低線量率と表現することになっています。今のは、例をあげて言いましたが、高線量率と低線量率となる基準が明確決まっています。

 

それを以下に示したと思います。

・高線量率(HDR:high dose rate)・・・12Gy/h以上
1回の治療時間:数分から数十分

・中線量率(MDR:middle dose rate)・・・2~12Gy/h
1回の治療時間:数時間

・低線量率(LDR:low dose rate)・・・2Gy/h以下
1回の治療時間:20時間以上~1週間