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胸部レントゲンで測るCTRとは?

定期的に行われる定期検診で必ずといっていいほど撮影するのが、胸部レントゲンです。多くに人は、胸部レントゲンでは肺の病気を見つけるためと思われるかもしれません。

 

確かに肺の病気を見つける意味もあるのですが、実は、それだけではないのです!!心臓の大きさを測定する意味でも使われているのです。

 

今回は、その辺のお話をさせていただきたいと思います。

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CRTとは?

胸部レントゲンで心臓の大きさを測定するのに使われるのがCRT(心臓胸郭比)と言われるものです。

 

これは、深吸気時に正面から撮影された胸部X線写真を使い(一般的な胸部レントゲン撮影法)、胸郭横径に対する心横径の比率を百分率で表したものです。と百聞は一見に如かずというように言葉ではわかりにくいと思うので、下の図を見ていただくの一番だと思います。

 

CTR=B/A×100%

そして、心胸郭比(CTR)は、

 

CTR=B/A×100%

 

で求めらえます。

 

この値が、50%以上であれば、心拡大と判定されることになります。上の図では、右が正常、左が心拡大した例になります。

 

左の画像では、誰が見ても心臓が大きく見えるのではないでしょうか?ただ、この胸部レントゲンで判定するうえで、注意するポイントが2つあります。

 

➀深吸気時に撮影ができているか?
撮影時の吸気が十分でないと、心横径(上の図でB)がほぼ不変なのに対して胸郭横径(上の図でA)、CTRが過大評価されることになります。また、逆に横隔膜に心臓が上に押され、心尖部が挙上すると心臓が大きく見える場合も過大評価される場合があります。

 

撮影する側もされる側も正確な診断をしてもらうためには、手を抜いてはいけないのです。

 

➁撮影時の体位はどうだったのか?
CTRは、撮影の体位によっても変化します。
例えば、寝て撮影された場合、普段の胸部レントゲン写真はフィルムに胸を付けて背中から腹側に向かってX線を照射し撮影しますが、寝て撮影するときにはその逆になります(フィルムを背中側において腹側から背中側にX線を照射する)。

 

すると、心臓は体の前側にあるので、フィルムを胸に密着して撮影したときと、背中側に配置したときでは、背中側に置いた時のほうが、心臓とフィルムの距離が離れることになります。

 

X線画像はフィルムから離れるほど大きく写るという性質をもっていますので、胸をフィルムに付けて撮影するときに比べ、フィルムが背中側にあるほうが心臓が大きく写ってしますのです。

 

結果、CTRは過大評価されることになってしまいます。

 

このような性質があるため、実際には、寝て撮影された場合、CTRは60%未満が正常と判定されます。

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心拡大とは?

胸部レントゲンで心拡大とわかっても、実際に、心臓がどのような状態になっているのでしょうか?

 

心拡大とは、心臓の内径・内腔が大きくなっている状態をいいます。

 

イメージでいうと、何度も膨らまして伸びきってしまった風船のような状態です。

 

心臓は、4つの部屋から構成されており、左に2つ、右に2つ部屋があり、上の部屋を心房、下の部屋のことを心室といいます。

心臓イラスト

 

いずれかの部屋が大きくなると、レントゲン画像で心臓が通常よりも大きくなって観察されます。心房が大きくなるのか、心室が大きくなるのかで疑われる原因は異なります。

 

その例として以下のものが挙げられます。

 

・心房が大きい場合

➀心房から心室への流入障害がある場合
通常、血液は心房から心室へと流れていきますが、そのためには心房の送る力だけではなく、心室の引き込む力も必要になります。

しかし、心室がかたく広がりにくくなっている場合には、心室の引き込む力が弱くなってしまい、血液を送りこむには心房の負担が大きくなります。結果、心房が拡大します。

 

➁心室から心房へ血液の逆流がある場合

心臓の弁が壊れ、心房に逆流する血液が負荷となり心房が拡大してきます。

 

➂不整脈

心房細動は心房が細かく痙攣する不整脈です。その持続時間が長いと心房は大きくなります。

・心室が大きい場合

➀心室を通る血液が相対的に多くなる場合

心臓には、血液の逆流を防ぐための弁が備え付けられています。が、逆流性弁膜症の場合、弁が壊れてしまっており、血液が逆流してきてしまうのです。結果として、心室を通る血液量が相対的に多くなってしまい、心室の拡大が起こります。
そのほかにも、心臓の内壁のいずれかに孔が開いてしまう場合(シャント性先天性心疾患)も同様に心室が拡大してしまいます。

 

➁心室の筋肉に異常が起こった場合

何らかの原因で心臓の筋肉が脂肪や線維などに置き換わってしまう疾患(拡張型心筋症)
不整脈などで長期にわたり心拍数が過剰に多い場合に拡大した場合(頻脈源性心筋症)

ただ、上でも述べたように、レントゲン上では様々な条件で心臓が拡大しているように見えてしまうため、病気かどうか確認するためには、心臓超音波検査を行う必要があります。

心臓超音波検査は、心臓の部屋それぞれの大きさ、形、動きを観察することができ、なぜ心臓が大きくなっているように見えたのか調べることが出来ます。

人によって1時間程度かかる検査ですが、簡便で被ばくもない検査のため、レントゲン画像で心拡大が指摘された場合には、必須の検査といえます。

出典:ja.wikipedia.org-

 

心肥大とは違うの?

心拡大はよく心肥大と誤解されることが多いですが、この二つは違います。

 

心肥大とは、心臓の壁が通常より分厚くなっている状態です。

 

出典:yamanifoods.blog.shinobi.jp-

 

肥大は4つの部屋すべてで起こる可能性がありますが、特に心室で起こる可能性が高いと言われています。

 

心室肥大の原因といわれているのが、高血圧、大動脈狭窄症、肥大型心筋症です。

 

特に左室肥大が進行すると、心室の壁が徐々に厚くなり、心臓の収縮力が低下して、重度になると心不全を引き起こす恐れがあります。

 

心不全を起こす前に、治療を行う必要がありますが、原因のによって治療方法や処方する薬が変わってきます。

 

なので、原因を探るためには心臓超音波検査が必須になりますが、肥満の場合など超音波検査でよく観察できない場合には、心臓MRI検査を行うことでより確実な診断を行うことになります。

心不全になると?

心拡大、心肥大ともに起こる重度になると心不全になります。

 

心不全は、長期間にわたり障害の起きた心筋によって心臓のポンプ機能が低下し、末梢の臓器に栄養や酸素を十分に送り出せない状態のことです。

 

そのため、以下のような症状が起こることがあります。

➀労作時呼吸困難や息切れ

➁尿量減少

➂手足のむくみ

結論として・・・

胸部レントゲンのCTRとは、心臓の病気を見つけるためのファーストステップのようなものです。

 

ただ、これだけでは病気の有無はわからないため、『心拡大』と判定されても慌てる必要はありません。

 

落ち着いて、循環器内科にかかり、心臓超音波検査、心電図検査などでより詳しく検査することが重要のようです。