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MRI原理➂ー縦磁化と横磁化ー

歳差運動をしている陽子は、RFパルスが送られると2つのことが起こります。

 

それは、

 

いくつかの陽子はRFパルスからエネルギーを受けとって、高いエネルギーレベルに移ること。(足で歩いている状態から逆立ちして手で歩く状態に移行するような感じ。)結果として、縦磁化の大きさは減少すること。

 

もうひとつは、いくつもの陽子が同調して、位相を揃えて歳差運動をし始めること。そこで、それぞれの陽子のベクトルは外部磁場に対して横方向に足し合わされ、横磁化が出来ることです。

 

簡単にまとめると、RFパルスは縦磁化を減らし、横磁化を作りだすことです。

 

では、今回は、この縦磁化と横磁化について、もう少しまとめてみたいと思います。

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新たに作られる横磁化ベクトルとは?

横磁化ベクトルは歳差運動している陽子と共に位相を揃えて動きます。

 

それを、客観的に観てみると、新たな磁気ベクトルは近づいたり遠ざかったりを繰り返しています。

 

それが何を意味をしているのか?

 

磁気ベクトルは、一定の状態で動き、絶えず変化することにより、電流を誘導している(電流が流れている)ことを意味しています。

磁気を発生し続けることで、電流も流れ続けるのです。

 

逆を言えば、陽子の動いている電荷は、電流であり、陽子の磁場を作りだしています。

 

つまり、このふたつの出来事は相関していて、動いている磁場は電流を作り、電流は磁場を作りだすのです。

 

そして、MRIでは、動いている、あるいは変化している磁気ベクトルが電流を作りだし、画像を作る信号となっているのです。

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MRI信号である電流からどうやって画像になるの?

画像を作るためには、体のどこから出てきた信号なのかを知る必要があります。

 

どうしたら、それがわかるのでしょうか?

段々難しくなってきましたが、実はまだ簡単です。

 

MRI検査をするとき、検査を受ける人は磁石の中(つまり磁場の中)に入ることになりますが、その磁場は、人のからだの全ての部分で同じ強度の磁場になっていません。

 

それどころか、体の断面のそれぞれの部分で強度が異なっています。

 

だからどうなの?ですが・・・

 

そのまあ絵に思い出していただきたいのですが、陽子の歳差運動の周波数は磁場強度によって決まるということです。

 

もし、この磁場強度が体の部位ごとに違っていれば、体のあらゆる部位に存在する陽子は、部位ごとに異なる周波数で歳差運動をしていることになります。

 

そして、歳差運動の周波数が違うことから、異なった部位から出てくるMR信号も異なった周波数になって発せられることになるのです。

 

頭には頭の陽子があり、「ここが頭だよー」と低い声で返事しているかと思えば、肝臓なら肝臓にある陽子が「ここが肝臓だよー」と高い声で返事しているようなもので、その部位ごとに違った声を上げているような感覚です。

MR信号についてもう少し詳しく・・・

もし、陽子が同調して、位相を合わせて回転していて、そのまま変わらなければ、とても規則的で理想的な信号が得られることになります。

 

ただ、現実は厳しいもので、そうはいかないのです。

 

RFパルスが切られると、すぐにRFパルスによって乱されていたすべてのシステムが、もとの静かで、穏やかな状態に戻ってしまうのです。

 

そして、新たにできた横磁化は消えて(横緩和:transverse relaxation)、縦磁化は元の大きさに戻るのです(縦緩和:longitudinal relaxation)。

 

では、この縦磁化の戻り(縦緩和)と横磁化の消失(横緩和)とはどいったものなのでしょか。

 

何度目にもなりますが、縦緩和とは縦磁化の戻りのことです。

 

RFパルスを送られて疲れる逆立ちで歩いていた陽子が疲れにくいもとの足で歩く状態に戻るようなものだと思ってください。

 

ということは、高いエネルギーレベルから低いエネルギーレベルに戻っていることになります。

 

ただ、全ての陽子が、同時にこのように動くわけではなく、これは陽子が次から次に元の状態に戻るという連続した過程です。段々と起こっていくのです。

 

では、陽子がRFパルスから受け取ったエネルギーはどうなっていくのでしょうか?

 

実は、このエネルギーは格子と呼ばれている周りに伝達されていきます。

 

そして、この過程が縦緩和と呼ばれ、同時に、スピン‐格子緩和とも呼ばれているのです。

 

上向き、足で立って歩くように戻ることで、陽子は、その前の状態のおように上を向いている同数の陽子の磁気ベクトルと打ち消しあうことがなくなります。

 

そして、この方向の磁化、すなわち、縦磁化は増加し、最終的には元の大きさに戻っていきます。

RFパルスを切られた後、陽子はエネルギーの高い状態から低い状態に戻る。

 

このことを、時間と縦磁化の関係としてグラフにして示すと、時間の経過とともに増加するような曲線が得られ、T1曲線と呼ばれています。

縦磁化が回復し、元の起き差に戻るまでの時間のことを、縦緩和時間(longitudinal relaxation time)と言い、63%まで回復する時間をT₁とも呼ばれています。

 

実のところ、この過程がどんな速さで行われるかという時間の定数であり、実際にかかる時間そのものではありません。

 

時定数とは、どんなものかイメージしにくい場合は、陸上のトラック競技を考えてみてもいいかもしれません。

 

トラックを一周するのにどのくらい時間がかかるか?というのはおおよそは、予想することはできますが、正確な時間はわかりません。

 

この予想の時間が時定数になります。

横磁化はどんなことなのか?

RFパルスが切られると、陽子の動きを指揮するものがいなくなるので、陽子の歩調は乱れ、また、位相(陽子の動き)はバラバラになっていきます。

 

図で表すと、下のような感じですね。

 

陽子は、置かれている磁場の強さによって決められる、一定の周波数で歳差運動をしています。

 

そして、MRI装置内では全ての陽子が同じ磁場の影響を受けることになりますが、実はそうでない場合も多くあります。

 

どういうことか?

 

・MRI装置内の磁場は、変化するもので、完全な均一ではありません。なので、場所によって、陽子に影響を与える磁場の大きさが変化するため、陽子はそれぞれの歳差運動の周波数で動くことになります。

 

・また、陽子は、隣り合った陽子の磁場からも影響を受けて、歳差運動の周波数にも影響されてしまうことがあります。

 

 

従って、RFパルスが切られた後、陽子は一致してまとまっているように、指揮するものがなくなるため、歳差運動の周波数も違ってくるので、様子は各々がバラバラに動きだしてしまうのです。

 

どのくらい速く、陽子の位相がバラバラになってしまうのかというと、とても短い時間です。
この短時間に、陽子同士の位相が180°ずれてしまい、それぞれの磁気ベクトルを打ち消し合い、横磁化がなくなっていくのです。。

 

この横磁化と時間との関係をグラフにすると、下り坂のような曲線が得られます。

 

横磁化は、時間経過とともに消失することを表しており、横磁化がどのくらい速く消えていくのか、表す時間(時定数:横磁化が最大の大きさの37%まで消失する時間)を横緩和時間T₂(transverse relaxation time)と言います。スピン‐スピン緩和とも呼ばれることもあるので、両方覚えるといいでしょう。